2018/2019シーズンもっとも注目していた演目だった。原作は石川淳、音楽は西村朗、台本は詩人の佐々木幹郎、演出は笈田ヨシ。新国立劇場創作委嘱作品、世界初演。
舞台セットは金属的。大きな鏡が舞台の上や側面に移動し、キャストの背中や頭部、オーケストラピット、映像などを映し出すのが非常に興味深い。鏡によって表される「反対側」「二面性」「別の側面」といった要素は作品の世界観に通じるものがあるだろう。
衣装は和をメインにしつつ、女性はドレス、主人公の宗頼は中国の賢人風で、全体的にメタリック。
音楽も硬質で、鋭利な不協和音が多用されてはいるが、現代音楽的な難解さは感じられなかった。オーケストラも非常によく訓練されている。
だが、「やはりオペラはまだまだ日本のものではない」というのが正直な感想だ。神歌の合唱で始まり、ところどころで歌が詠まれるが、歌は歌でも、日本の伝統芸能としての歌道や舞曲と西洋的な声楽は違うものだと考えている私には、それらが融合されることに抵抗がある。日本のオペラでありながらエログロなところも気に入らない。
しかし、そうはいっても日本のオペラを確立するためにはどんどん新しい作品を作らなければならないし、観客もそれに慣れていく必要がある。発展途上に立ち会う貴重な経験ができたとは思う。
演出：笈田ヨシ
指揮：大野和士
宗頼：�眦鎮匚�
平太：松平 敬
うつろ姫：清水華澄
千草：臼木あい
藤内：村上敏明
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