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2019年01月13日22:32

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【展覧会】ロマンティック・ロシア展(Bunkamuraザ・ミュージアム)

混雑する通勤電車に乗り、受注状況に一喜一憂し、事務処理に追われ、ほぼ毎日残業し・・・。そんな生活を繰り返していると、さすがに心が乾いてくる。実際の自然に囲まれるのはなかなか難しいので、せめて自然を描いた絵を見ながら深呼吸でもできればと思い、美術館へ。
今回の展覧会は、トレチャコフ美術館所蔵の19世紀後半から20世紀初頭の作品、約70点で構成されている。写実的で端正で洗練された絵画ばかりだ。
この時代のロシア美術の魅力は何と言っても広大で厳しい自然の描写だろう。都市を描いた作品でも、大きな川や果てしなく続く街区に土地の広さがうかがえる。見渡す限りの平原と空。一面の雪景色、あるいは夏の強い日差し。背の高い木々が生い茂る深い森は神秘的な雰囲気で、伝説の魔女バーバ・ヤーガがどこからともなく現れそうだ。

とてもヨーロッパ的で美しい作品ばかりだが、この美しさがロシア的なのかというと、それは少し違うと思う。この時代の画家たちは西欧で修業していただろうから、西欧的な技術とヨーロッパのロマン主義的な自己陶酔でロシアを描いているのではないだろうか。
しかし、この「ロマン主義的自己陶酔」は決して悪い意味ではない。私には古き良き時代のロシアへの郷愁があるように感じられた。多分、画家たちは次に来るロシア・アヴァンギャルドを予感していたはずだ。文化的にロシアの独自性が開花するのは素晴らしいことだが、急激な近代化は危険を伴う。社会的な不安が起きる可能性を敏感に感じ取れる芸術家だからこそ、心の拠り所として残さなければならないロシアの広大な自然や素朴な人々を懸命に描いていたと言えるかもしれない。

さて、自然を描いた絵に囲まれることで森林浴を疑似体験しようとしていた私だが、美術館が思ったよりも混雑していたのと、仕事モードにスイッチが入ったままニュートラルに戻りづらくなっているのとで、結局、浅い呼吸のまま美術館を出ることになってしまった。
でも、このような精神状態の時こそ、純粋に美しい絵を眺めることが重要なのだろうとも思う。
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