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2018年10月27日18:03

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【オペラ】魔笛(新国立劇場)

2018/2019シーズン、大野和士芸術監督就任初年は新制作のモーツァルトで開幕。
素描風の背景の上を白1色のライトが自由に動き回る舞台装置で、木炭で塗りつぶした画用紙の上にチョークで絵を描いていく過程を見ているようだった。色使いがシンプルなので、魔笛の「ぶっ飛んだファンタジー感」を表現するには少し物足りないが、スピードのあるアニメーションが舞台に奥行きを出し、観客もキャストたちと一緒に舞台の奥へ進んでいくかのような効果もあって、非常に洗練された演出だ。
ラストで、パミーナのドレスの後ろが徐々にほどけ、ものすごく長い裾になっていくのもステキだった。

キャストはレベルが統一されていて、ただ単に音楽を聴くだけであればまったく問題はない。だが、キャストのビジュアルが私の好みと違っていた(笑)点はメモしておきたい。
まず、ザラストロ役のヴェミッチとパパゲーノ役のシュエンが長身でスリムで若々しすぎる。もちろん、どんな名歌手も最初のうちは「まだ若い」と言われるわけで、10年後のヴェミッチが当代最高のザラストロに、シュエンが舞台に立っているだけで笑えるパパゲーノになることを期待するのみだ。シュエンは「セビリアの理髪師」のフィガロも似合いそう。
そしてタミーノ役のダヴィスリムは雰囲気がアメリカン。まぁ、カジュアルな王子様がいてもいいとは思うけれど(プロフィールを見たら、オーストラリア出身とのことだった。おおらかな役柄での再登場を待ちたい)。

今回の舞台では観客の意識が一点に集中した瞬間があった。夜の女王が超絶技巧アリアを歌うときだ。
安井陽子の夜の女王は安心して聴くことができると分かってはいるけれど、それでもやはり本番の舞台では何が起きるか分からない。誰も呼吸をしていないのではないかと思えるほど静まり返り、観客全員が固唾をのんで舞台に集中。観客席がこれほど緊張する舞台を経験したのは初めてだ。

モーツァルトなので、音量的なパワーが鑑賞チェックポイントになるわけではない。私にとっては3度目の魔笛なので、いまさらストーリーに驚くこともない。絶対に寝落ちする(仕事が相変わらず忙しくて深夜帰宅が続いているので・・・)と思っていたのにもかかわらず、実際にはちっとも眠くならなかったのがとても不思議。淡々としつつ、意外と飽きずに見ていられるのは、モーツァルトのオペラだからなのだろうか。



演出:ウィリアム・ケントリッジ
指揮:ローラント・ベーア
タミーノ:スティーヴ・ダヴィスリム
パミーナ:林 正子
パパゲーノ:アンドレ・シュエン
パパゲーナ:九嶋香奈枝
ザラストロ:サヴァ・ヴェミッチ
夜の女王:安井陽子
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