その子には入学式の朝に最初に会った。
雨が降っていて、母といっしょに傘をさして学校に向かっていると、前方に同じような親子が歩いていて、一緒に行きましょう、ということになった。
学校に着いて、同じクラスだとわかった。教室は、一年生だけの木造の建物で、うちのクラスはその2階。
教室に入ると、出席番号が同じで、席も隣どうし。親たちも、びっくり。こんなことがあるんじゃなー、と話していた。
そんなこともあって(あと家も近いし)、毎日その子といっしょに帰ることになった。
今思えば、その頃「学校の友達」と呼べるのは唯一その子だけだった。
もしかしたら、本当に神様はいるのかもしれない。
もし、幼稚園の時の、みんなに嫌われたままでいたら、どうなっていただろう。
といっても、下校のときだけで、そんなに仲良くはしてなかった。教室ではシャッターを降ろしたように全然しゃべらない。遊んだりもしない。帰るときだけ普通に話したりする。それは、どう思われていたのだろう。
その子にとって、わたしは何か役割があったのか、なかったのか。小学校の最初の一年、そんなんで良かったんだろうか。
ただわたしは恵まれていた。その時には気づかない。
教室の外の、スーパーヒーローでも意地悪でもない、ただそこにいる普通の子だった。それが何より大切なことだった。
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