2018年5月3日(劇場鑑賞)
さっぱりとした語り口で、実際に起きた政府による言論弾圧の歴史を映像化、現代における言論統制の現状を揶揄したようにしか見えないところも含め、かなり楽しめた作品でした。
物語は、ニクソン大統領政権下の1971年、ニューヨーク・タイムズ紙がベトナム戦争を分析及び報告した国防総省の機密文書「ペンタゴン・ペーパーズ」の存在をスクープしたことから始まった、政府による圧力と憲法の理念を守る新聞社との熱いバトルを描いた作品です。
レモネードのぼったくり販売と、その結果としてのぼろ儲けにより、ベン・ブラットリー編集主幹(トム・ハンクス)の娘は巨万の富を得たのだった…
というのはサブエピソードで、本筋は女性社主として男性社会の中で常に厳しい目で見られているキャサリン・グラハム(メリル・ストリープ)が、一世一代の決断により政府と戦うことを決断し勝利するまでの話です。
この映画の良いところは、ニューヨーク・タイムズ紙でなくワシントン・ポスト紙を主役に持ってきたところで、その理由はラストで明かされますが、続きは映画「大統領の陰謀」を観て楽しんでくださいという、映画と映画をブリッジする素敵な作りになっているところなんかがとてもお洒落で良いと感じました。
この映画における政府の圧力が、とても堂々としていて男らしいもので、どこかの国の「忖度(そんたく)」なる言葉のマジックと違い、司法省による命令文書で出版を差し止めるという大技なところなんか、むしろ政府もやるなと褒めたいくらいでした。
良い映画は、短い尺の中で台詞ではなく映像で語ると考えますが、この映画も冒頭からほとんど台詞無く当時の時代背景をスピーディーに語っていて、とてもカッコ良かったです。
そして、秀逸なのはクライマックスで、各社の新聞を机に広げることで政府の新聞に対する弾圧に屈しないことを、台詞でなく観客に伝える素晴らしいシーンでした。
最後に、この映画をスピルバーグ監督は映画「レディ・プレイヤー・1」と同時進行で制作したという事実から、映像作家としての手腕と(現代にこのテーマを訴えようと考えた)信念に脱帽しました。
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