もしもし
あっ、日本語でしかも珍しく男性の声が
KOKOさんですか?
この力強い声は誰?
仕事関係の人?
弟の声じゃないな。
もう引退して何年にもなるから仕事関係でもないはず。
一体誰?
あの、僕、ケイスケですが覚えていらっしゃいますか?
えっ、ケイスケさん?
はい、そうです、お元気ですか?
ええ、まあ、元気です。73でヨボヨボだけど。
僕19でイギリスに来て、以来ずっとWで働いて、、、
お久しぶりねえ
まだ子供みたいな若い彼の美容コースの手配をしてあげた人だった。
その後紹介したサロンでずっと仕事をし、サロンオーナーにも気に入られ、そのオーナーがワーキングビザ入手に協力してくれたんですと説明。
その5年後には頑張ってレジデンシーが取れてずっとこっちで頑張っていますとの彼の説明。
ケイスケさん大阪だったよね。
いや、僕は大分です。ボスが大阪のM先生で、、、
懐かしい名前。
M先生お元気?
いや、彼は亡くなって今は奥様が後を継いで頑張っておられます。
そうなんだ。
M先生ご夫妻がサスーンのコースを取られた時、ソーホーの中華レストランにご案内したら、そこのラーメンを随分と奥様が気に入られて、これを食べるためにも絶対また来ますとロンドンでの体験をも含めて感動しておっしゃった言葉。
けどM先生やスタッフの方はいらしても2度といらっしゃることはなかった。
まだまだ当時の日本の美容室の事情がオーナーの奥様が美容師とはいえ、スタッフを優先しなければならないような事情があったのだろう。
それでなくともまた来ますと言いながらも2度といらっしゃらなかった美容師さんは多い。
経済的な理由もあったと思うが、それよりも一番の理由はなかなか休みが取れないのだった。
ロンドンで1週間コースを取るためには10日間は必要となる。
するとそんなに休みをもらえるケースはほとんどなく、当時の美容師さんはいったん退職してロンドンに来るのだとの説明だった。
もちろん大きなサロンが会社で研修ツアーを組む場合は別。
話が逸れてしまったが、そういえばケイスケさんとは何度か会っているのにあまりにも昔のことだったので忘れていた。
ちょうどビザを取りたいと熱心に手を尽くしていた頃だった。
そのケイスケさんが今や38歳で結婚6年目!
そしてこの私しはミソっ歯のヨボヨボババア。
長い時間が過ぎたんだなあ、と懐かしい電話に胸を突かれた。
と思った途端
なんで今まで連絡くれなかったのよっ!
思わず言ってしまた。
しかし生きるのに忙しいのはお互い様だ。
互いの番号を交換し、いつか会おうねと約束した。
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