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2018年03月25日17:12

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【オペラ】愛の妙薬(新国立劇場)

本と文字をあしらった大道具に、カラフルな衣装を着た登場人物たち。絵本の中に迷い込んだような気持ちになる。
スタッフが大活躍するのがこのプロダクションの面白いところ。大道具スタッフが衣装を着て舞台に登場し、上演中にセットを動かしている。舞台正面手前のプロンプターボックスからはプロンプターが手を出して物を渡したり、一生懸命に言葉を思い出そうとしているキャストにヒントを出したり。2幕目開始直前にドゥルカマーラのお色気秘書が客席にやってきて指揮者に妙薬を渡そうとし、指揮者が片言の日本語で「いくらですか」と尋ねるのもおかしかった。

アディーナはお金も教養も美貌も持っていて、それを自覚はしているけれど、にもかかわらずどこか自分に自信がないところがあるのかな、と思う。ネモリーノの真っ直ぐな誠意を受け止められず、ついつい彼を試してしまうのだろう。ところで彼女は本当にネモリーノが好きなのだろうか?彼の入隊契約書を買い戻したのは、単に彼女の独占欲が強いからなのでは?おまけにネモリーノはおじさんの財産を相続して今やお金持ち。みすみす手放すわけにはいかない(笑)。
しかし、アディーナ役のドレイにはそんないやらしいところはまったくなく、快活でありながら、自分の気持ちに迷う女性を好演していた。声量も声の伸びも圧倒的。ぜひまた聴きたいソプラノだ。

ネモリーノは教養もお金もなく、高嶺の花のアディーナに相手にされていないというところで自信喪失中。自分に自信がないという意味ではアディーナと同じだが、アディーナを愛していることをしっかりと自覚していている分、ネモリーノのほうが強いだろう。
演じたピルグは、ルチアーノ・パヴァロッティに師事したこともあるという若手テノール。高音が裏声的なのと、低音がざらついているのが気になった。個人的にはもう少し高くて均質な柔らかさのある声が好みなので、「悪くはないけど、ちょっと違うなぁ・・・」と思いながら聴いていた。演技はとても上手で、手持無沙汰、酔っ払ってご機嫌、能天気な感じの表現が素晴らしかった。



演出:チェーザレ・リエヴィ
指揮:フレデリック・シャスラン
アディーナ:ルクレツィア・ドレイ
ネモリーノ:サイミール・ピルグ
ベルコーレ:大沼 徹
ドゥルカマーラ:レナート・ジローラミ
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