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2018年02月24日10:30

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【展覧会】ブリューゲル展(東京都美術館)

展覧会でブリューゲルの絵が何点か出ていることはあっても、ピーテル・ブリューゲル1世からひ孫の代までの一族の作品が揃う場は滅多にない。そのような意味で今回の展覧会は非常に貴重な機会といえるだろう。この展覧会のおかげで、ファミリーが努力や工夫を重ねて自らの技術を向上させたり作品を売ったりして、ブリューゲルブランドの確立に貢献していたことが分かった。
雰囲気が似ている作品が多く、私はそれぞれの画家の特徴をしっかり理解することはできなかったが、ブリューゲルに関してはそれで良いのだろうとも思う。というのも、「父や祖父の作品の模倣」の連続は決して独自性がないわけではなく、父や祖父の作品の精密さを超えられるかどうかという挑戦であり、同じ雰囲気の作品を作ることによってブランドイメージを固める戦略になるからだ。
「商売のことをしっかり考えている」というと、芸術家にあるまじきという感じもするが(笑)、不思議とブリューゲルファミリーの作品にはいやらしさがなく、むしろ職人魂に圧倒される。雲と空の空気感、水面のきらめき、花びら1枚1枚の厚み、動物や鳥のふわっとした毛並み、昆虫の羽の透けるような薄さ、今にも動き出しそうな人々、当時の人々が使用していた衣服や日用品の形や質感、日々の暮らしの様子・・・。もっと近くに寄って隅々までじっくり眺めたい!と思う作品ばかりだ。しかし残念ながら、絵に近づける距離は決まっている。小ぶりの作品の前にいつまでも立っていると他の鑑賞者の迷惑になる。人が比較的少ない夜間を狙うと閉館時間が気になって落ち着かない。意欲的な展覧会だけれど、満足できる環境で絵を見ることが難しく、やや不完全燃焼・・・。

持ち運びしやすい、質が変わらない、という点が重要だったようで、銅板や大理石に描かれた作品があるのが面白い。銅板に描かれたものは絵具がつややかで、仕上がったばかりのような新鮮さがあった。大理石に描かれていた昆虫の習作は絵画というより標本のようで、気味が悪いほどリアル。大理石の地模様も雰囲気がある。
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