mixiユーザー(id:735114)

2017年12月30日23:24

30 view

【映画】謎の天才画家 ヒエロニムス・ボス

プラド美術館が所蔵するヒエロニムス・ボスの代表作「快楽の園」。学者、芸術家、文学者などがこの三連祭壇画についての魅力や個性的な解釈を述べ、映画を鑑賞する我々に新たな気づきをもたらしてくれる。「快楽の園」の細部をひたすらじっくり映してくれることを期待していた私にはやや肩透かしではあったが、「なるほど〜!」と思う部分は非常に多く、帰宅後、画集を今までにないほどじっくり眺めてしまった。

歴史的な視点:
・15〜16世紀になると珍しいものが市場に並び始め、人々の想像力を掻き立てるようになった(1570年頃になると自然科学が発達してきて、画家たちはボスから離れてしまう)。
・当時の人々にとっての聖典は、聖書と自然。ボスは聖書を題材に取り、自然界に存在するものを写実的に描き込んでいる。
・当時は本に描かれた細密画などを大勢で見て、いろいろと語り合った。ボスの絵にはそのような細密画からヒントを得ているのではないかと思われるモチーフが多く登場する。
・当時の人々(デカルト以前)は言葉に性的な意味があってもあまり気にしなかったので、「快楽の園」のような作品も受け入れられた。
・「快楽の園」は、最初の所有者であるブルゴーニュ領ネーデルランドのヘンドリック3世のおじが、甥たちの教養のためにボスに制作を依頼した。その後、何度か持ち主が変わり、1591年にスペイン王フェリペ2世が競売で落札。フランドルで作成された絵がスペインにあるのはそのような歴史のため。

鑑賞のヒント:
・左パネルに描かれるエデンの園。神がアダムとイヴとを結婚させるシーンだが・・・。神は、神というよりキリストのイメージで描かれていて、鑑賞者を見つめている。また、神がイヴの手を取っていて、神とイヴが結婚するようにも見える。そして「快楽の園」はアダムが見ている夢なのではないか。
・エデンの園の池から異形の生物が続々と這い出している。悪魔はエデンの園で生まれたのだ。
・イヴの近くに描かれる後ろ姿のウサギがトトロに似ている(笑)。


写実的な幻想、静謐な半狂乱、のどかな暴力性。人間や動植物だけでなく、個々の主題や全体の雰囲気など、すべてがデペイズマンによって多層的に描かれている。
デペイズマンといえばシュルレアリスム絵画の手法の一つだ。そういう意味では、「快楽の園」はフランドル絵画というよりシュルレアリスム絵画と言った方がしっくりするように思う。



監督: ホセ・ルイス・ロペス=リナレス
出演:ラインダー・ファルケンブルグ、オルハン・パムク、サルマン・ラシュディ、セース・ノーテボーム、ルネ・フレミング他
1 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する