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2017年10月11日06:21

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駆け落ちしようか

約束どおり朝10時過ぎの電車に乗った。
30分だけの場所なのだが、なぜか行ったことのない街。
友達は駅で待っていてくれた。
私よりも10歳かちょっと若い女性。
目がくりくりしていて若い時はさぞかし綺麗だったに違いない。
70年代が青春だったろう。
長くてウエイビーなヘアーを両肩に垂らし、花輪の冠をかぶって長いスカートが風に揺れている姿を簡単に想像できる。

カフェでお茶をしながら楽しいひと時を過ごし彼女と別れた後、駅の周辺をちょっとぶらぶらして見たくなった。
小さな町には駅の周辺に結構名の知れた店やスーパーが集まっていて、洒落ているのだ。
だからちょっと見て見たくなった。
銀行、花屋、ブティック、家具屋、スーパーもポッシュなスーパーなどある。
私が住んでいるロンドン南の庶民的な郊外とは全く雰囲気が違う。

店の並んだ小さな通りの奥に行って見たいと思っていたスーパーがあったので入って見た。
大きなスーパーだ。
我が家の近所のスーパーと違ってこのスーパーは魚や肉のカウンターがある。
どんな魚が置いてあるか興味があった。
あるあるある。
ムール貝やイカ、レモンソール(カレイ)もある!
レモンソールとスプラット(小さな魚)を買った。
レジに並ぶと私の前の白髪の男性が振り返った。
私くらいの年齢(70代)かちょっと若いかも。
「買い物はそれだけ?」
唐突な質問だったので黙ってうなづいた。
彼は突然レジの前に並べていた自分の買い物を押しやり彼と彼の前の人の品物の間にスペースを作った。
そして私の品物をそこに移し始めたのだ。
彼の意図がやっとわかった私は慌てて
「あ、大丈夫ですよー、このままで。」
「いやいや、少ないんだからお先にどうぞ。」
とおっしゃる。
その彼の買い物もビスケット類やお茶などで少ない方だ。
「いえ、本当に大丈夫ですから」
「まあまあどうぞ」
と彼。
「ありがとうございます。」
と彼の前に並ぶと後ろから
「いや、この後二人で駆け落ちしようかなと思って。」
キャッ!
駆け落ち?
なんとロマンチックな!
「それもいいですねー」
思わず微笑んでしまった。

レジが済むと彼に
「ご親切にありがとう」
礼を言ってスーパーを出た。

白髪の紳士の洒落たジョークに突然一日がピンクに染まった。

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