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2017年10月10日23:33

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ハロルドとリリアン

 キネマ旬報シアターで「ハロルドとリリアン ハリウッド・ラブストーリー」を観る。1950年代から多くの映画の絵コンテを描いたハロルドと、映画リサーチを担当したリリアンのマイケルソン夫妻の記録映画。監督はダニエル・レイム。
 台本を読んで、絵コンテを描くのは監督だと思っていたが、専門の作家がいたのか。映画リサーチャーは、その映画の時代背景など徹底して調査する仕事。冒頭、2人が関わった映画のポスターが次々映し出されるが、後半は観ている作品が多い。しかしこの夫妻の名前は知らなかった。映画に名前が出ることのない仕事なのだ。「十戒」のコンテを見ると、ほぼ映画通りなのだが、ハロルドはセシル・B・デミルには会ったことがないと言っている。また、「卒業」でのアン・バンクロフトの足越しにダスティン・ホフマンを捉えたカット、2人の最初の情事の後、テレビを観ているホフマンの前を、バンクロフトが通るごとに服を着ていく場面も絵コンテ通り。マイク・ニコルズは、アカデミー賞受賞のスピーチで、「皆で取った賞」と言っていたが、その通り。
 絵コンテを重要視したのはヒッチコックで、初めてハロルドを「鳥」の現場に連れて行く。ガソリンスタンド炎上場面を、実際の映像と絵コンテを重ねて見せるのは面白かった。
 驚いたのは、ハロルドが2人の人生を絵で残していることで、リリアンや親友のダニー・デヴィート(この人が製作総指揮)、コッポラらの証言のバックに出てくるのが面白い。2人の能力については、ハロルドが第二次大戦中、レンズ越しに目標を見る爆撃機に乗っていたこと、リリアンは親がなく、孤児院で本を読むことのみが楽しみだったことを挙げているが、それよりも重要なのは2人のキャラクター。
 美術部門を率いた「スター・トレック」でアカデミー賞にノミネートされるも、受賞スピーチを思いつかず、受賞しなければいい、と考えるハロルドの控えめさ。「スカーフェイス」の調査で、南米の麻薬王に単身会いに行こうとして止められるリリアンの並外れた積極性が楽しい。女性の社会進出が難しい時代に、リリアンがサミュエル・ゴールドウィンの映画ライブラリーに勤め、その責任者になるサクセスストーリーもいい。
 映画好きとしては、「ハリウッド理想のカップル」を知らしめたことがうれしい。
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