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2017年04月10日00:07

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漢達の輓曵競馬

 SPACE雑遊で道産子男闘呼倶楽部「漢たちの輓曵競馬」を観る。モダンスイマーズの津村知与支、扉座の犬飼淳治の北海道出身の男優2人のユニット。作、演出の女優が少し絡んでくるが、ほぼ男2人の芝居。暗転の中、男の息遣いが聞こえる。舞台が明るくなると、2人が1本の縄跳びで跳んでいる。この導入部でまず大笑い。ここから回想が始まる。
 主人公は会社をリストラされハローワークに通うが、尊大な態度と無理な高望みで、陰で職員に「クズ」と言われる。実態は気弱な男で、バイト先では年下の女性に頭が上がらない。ある日米に文字や絵を描いて売っているホームレスに出会うが、これが元同級生と分かる。
 飲みに行ったのをきっかけに、ホームレスは主人公の部屋に住み着いてしまう。主人公は迷惑がるが、自分より下の者ができたので、ちょっと嬉しそうでもある。主人公の態度は鼻持ちならないが、描き方が戯画化されているので、腹が立つより笑ってしまう。存在しない彼女の話をあっさり信じてしまう元同級生のイノセントさもあって、コメディと言っていい。北海道日本ハムの中島卓也を「最下層男子の希望」とする元同級生の主張は爆笑。
 主人公の部屋は、ほぼ古いマンガとLPレコードしかない。よかった過去へのこだわりだろうか。また、元同級生がホームレスになるきっかけとなった冤罪事件の話から、2人の接近が見え始める。
 相棒物の面白さは、両者に起きる変化だが、少し柔らかくなった主人公は元同級生にパソコンを教え、元同級生は上下する感情をコントロールできるようになり、上昇が始まる。しかし主人公は、肥大した自我からとんでもない失敗をしてしまう。さらに元同級生が父の形見であるビートルズのレコードを盗んだと疑う。
 2人が激しく対立するこの場面は、緊張感がある。ここで自らの「盲点」に気づいた主人公は、初めて元同級生に本当の自分を見せ、ある行動に出る。余計な自我を捨てた主人公が、新たな道に踏み出すラストは清々しい。「輓曵競馬」は、北海道で行われている重い橇を引いた馬が走る競馬。馬もサラブレッドでなく、重量のある馬。この2人の人生をたとえているのだろう。面白い芝居だった。劇場スタッフとして、外波山文明さんがいるのに驚く。
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