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2016年10月25日06:49

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「少女」

湊かなえが原作である。
小説は「告白」のように登場人物視点ごとに章立てされているようだが、映画版は「告白」のような巧妙な流れになっておらず、ちょっとバランスの悪い作品になってしまった。

由紀(本田翼)と敦子(山本美月)は地方都市に住み、桜川高校に通っている。
小さい時からの親友で、かつては一緒に剣道を習っていたが、ある日由紀は左手に大けがを負ってしまい、剣道をやめてしまう。
敦子はそのまま剣道を続け、中学の時に全国大会を制覇、高校でも剣道を続けていたが、ある時団体戦の決勝で負けてしまい、チームも地方大会で敗退してしまう。
かねてから敦子は空気が読めない性格で、チームメイトからねたまれていた事に気付いていなかったのだが、この敗戦で一気にチームメイトから手ひどい悪口を言われるようになる。
それから敦子は周りの悪口に敏感になり、酷い時には過呼吸に襲われるようになった。
脚のケガが治っていなことにして剣道を控え、静かに暮らす事にしていた。

由紀は剣道をやめた後、やや斜に構えて世間を見るようになっていた。
かつては厳格な教員で、認知症になった祖母と同居してた事も影響していた。
手の怪我の原因は、祖母に物差しで殴られてできたものだった。
そんな由紀は、「ヨルの綱渡り」というタイトルの小説を書いた。
彼女の文才は素晴らしく、大学時代に同人誌を発行していた国語教師の小倉(児嶋一哉)も一目を置いていたのだが、なんとあろうことか、彼女の作品を盗んで自分の作品として新人賞に投稿してしまった。
そして、賞を受賞してしまう。
誰も信じられなくなり、ますます世間から距離を置こうとする由紀。

そんな時、クラスに紫織(佐藤玲)が転校してきて、由紀と敦子に近づいてきた。
だが紫織は親友の星羅が自殺をしている事でやはりやや屈折した考えを持っていたため、由紀とは相いれなかった。
夏休み前に由紀は二人から離れ、図書館で知り合った牧瀬(真剣佑)付き合うようになる。

紫織はブランド物のバッグを持っていたのだが、それは痴漢冤罪を誘発し、相手からゆすり取ったカネだった。
とまどう敦子を誘って紫織は中年男性からカネをゆすり取るが、敦子はそれを機に詩織から距離を置くようになる。

敦子は脚のケガを理由に1学期の体育を休んでいたのだが、その分の単位取得のため、夏休みの間認知症患者の養老院でボランティアをする事になった。
そこで高雄孝夫(稲垣吾郎)と言うちょっと変わった名前の男と知り合う。
噂では前科があるとの事で、誰も近づこうとしていなかった。

一方由紀は、難病で入院している子供たちのためのボランティアをしようとするが、あまりの馬鹿馬鹿しさに1日で辞めてしまう。
ところがその病院で、タッチーと昴と言う二人の子どもとであった。
成功率7%の手術を控えた昴は、行き分かれた父親との再開を望んでいた。
由紀はなんとか昴の父を探そうと努力する。

物語の冒頭は、少女たちによる演劇チックに始まる。
ミステリー感が強く、「告白」や「ソロモンの偽証」のように、少女を自殺に追い込んだ真相を探る、というストーリーかと思った。
しかし実際には、由紀と敦子の青春ストーリーであった。
世間の狭い地方都市でいろいろな人間模様がクロスして、最後にそれが収束する、と言う展開である。
だが、物語の前半はミステリアスに展開して緊張感が高まるのだが、夏休みに入ったあたりでだんだんとその緊張感が緩んでしまう。
前半のここそこに伏線が張られているのだが、それがあまり強調されておらず、かつ、意外と淡泊に終息してしまうのだ。
認知症の由紀の祖母が常に叫んでいる「因果応報」というキーワードも、物語全体に大きく関わってくるのだが、脚本上ではあまり強調されていない。
由紀と牧瀬の距離感も、イマイチよくわからない。

原作を読んでいないのだが、ひょっとすると、2時間と言う枠に収めるにはやや無理があったのかもしれない。
連続ドラマにしたら、もう少しいろいろと深堀できて、全体がまとまったんじゃないかと言う気もする。


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