南米極左政権のベネズエラが激しく揺れている。
昨年のアルゼンチンの偏向的左派政権の退場に始まる南米政治の正常化・民主化（１５年１２月５日付日記：「アルゼンチンのポピュリズム左派政権の退陣は、南米左派政権消滅の第一歩」を参照）は、先月のブラジル、左派大統領ルセフの弾劾・罷免で、いよいよ本丸のベネズエラに波及してきた。
◎参加者１００万人、最大規模の大デモ
１日、中道右派の野党連合が主導する反マドゥラの大デモが、首都カラカスなどの街頭を埋めた。野党連合によると、デモ参加者は１００万人で、過去１０年以上では最大規模のデモとなった（写真）。
ベネズエラを支配する大統領マドゥラは、経済・外交面で親キューバ路線をとったチャバスの死亡後に、その路線を引き継いだ。原油というモノカルチャーの構造は、高油価の時は貧困層にふんだんにバラマキを行え、多少のインフレも耐えられた。
しかし原油価格の下落で、貧困層へのバラマキの原資がなくなり、そればかりか必需品輸入のための外貨源も失われたので、ベネズエラは物不足とハイパーインフレの共存する貧困国家に転落した。
◎２年連続の大幅マイナス成長
マドゥラの極左路線の行き詰まりにより、昨年１２月、（１５年１２月８日付日記：「ベネズエラ総選挙でもマドゥラ与党の左派大敗、中南米左翼の退潮にさらに拍車」を参照）マドゥロ与党の統一社会党（ＰＳＵＶ）は大敗を喫した。
カラカスの商店の棚には、何もない。たまに並ぶことを見越して、市民は夜明け前から行列を作る。旧ソ連、現キューバで日常的に見られる光景だ。
買えたとしても、週１度。身分証明書の番号を控えられて制限される。
２００４年にはＧＤＰ成長率が１８％を超えたのに、昨年はマイナス７％で、今年はそれを超えるマイナス８％が見込まれている。
◎今年の物価上昇率は７２０％
そうした国民の窮状が、昨年の与党・統一社会党の大敗となったのだが、マドゥラは大統領の座に居座り続けている。それどころか野党や政府に批判的なメディアの幹部を７０人以上も逮捕・投獄している。
１日の反政府デモに１００万人は、ベネズエラ国民の忍耐が限度に来ていることを示している。前述のような物不足の上、昨年の消費者物価上昇率は約１６０％、今年は同７２０％ものハイパーインフレが予測されているのだ。
◎公務員管理職有志もマドゥラの罷免求める国民投票実施の署名
生活が苦しいから、犯罪がはびこり、首都カラカスの１０万人当たりの殺人発生率は１１９．８７人と世界最悪水準である。東京の１０倍という殺人発生率なのだ（写真）。
弾圧と生活苦を逃れ、これまでに近隣諸国やアメリカに亡命した人は、１５０万人にものぼると言われる。
１９９９年のチャベスの大統領就任以来、２０年近くも続く極左路線で、政府から反対派は一掃されたはずだが、それでも債務１３００億ドルという破産寸前の国家財政、前述のハイパーインフレと極端な物不足、マイナス成長、治安の悪化……に危機感を抱く公務員管理職有志は、マドゥラの罷免の是非を問う国民投票実施を求める署名運動を展開、管理職１万３０００人のうち４０００人もの署名が集まった。
政府高官は、この動きに署名した者は４８時間以内の解雇の恫喝を加えた。
◎ベネズエラの夜明けは近い
ベネズエラ憲法では、大統領罷免を求める国民の署名が必要数に達すると、罷免の是非を決める国民投票が実施できる。しかしマドゥラの意を体した選管当局は、手続きを引き延ばしている。そして管理職公務員の解雇や野党指導者やメディア幹部の逮捕の脅しである。
１日のデモは、直接には国民投票実施の要求のデモであったが、マドゥラの任期の２０１９年１月まで待ちきれないという切迫したものであった。
この場合、軍によるクーデター＝宮廷革命も許容されるのではないか。
南米左翼政権の孤塁が落ちるのも、間もなくかもしれない。ベネズエラ国民を包む「赤い暗黒」に曙光がさす日は近い。
注 ＧＲＥＥによる容量制限をオーバーしているため、読者の皆様方にまことに申し訳ありませんが、本日記に写真を掲載できません。
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