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2016年09月04日05:21

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『シン・ゴジラ』、映画館に観に行かない理由とゴジラについての生物学的考察

 『シン・ゴジラ』が人気らしい。報道によると、政府内でも危機管理に参考になる、と鑑賞の勧めが回っているとか。
 ゴジラの持つ迫力満点という評で、観に行きたいが、時間がない。というか、娯楽作品は金を出して劇場では観ない、という変な僕的基準に合わないからでもある(娯楽作品なら、僕が観に行かなくとも誰もが行く。しかし少人数の観客しか見込めない社会派映画なら応援のために観に行く)。

◎超高温の原子炉を包める蛋白質って……?
 とりあえずテレビ放映まで、様子見となりそうだ。
 実は僕は、ゴジラ映画は大好きだ。1954年の第1作からすべて観ている(これもテレビで、だけれど)。
 最近のゴジラは、荒唐無稽さがさらに増し、それだけに娯楽作としては迫力を増している。核エネルギーで生きていく、なんて、生物の常識ではあり得ない。そもそも超高温となる原子炉を体内に包める(格納できる)蛋白質なんて存在しない。
 あり得ない、と言えば、身長118.5メートルもの超巨大生物が、地上を歩き回るなど、生物の設計常識を越える。

◎ゴジラの体重をシロナガスクジラから推計する
 以下は、生物学の立場から、ゴジラの「破天荒」ぶりを論考する。
 ゴジラは第1作でこそ、身長50メートルとされていたが、作品が新しくなるにつれて、どんどん大型化していっている。
 さて、このような超大型の動物が陸上を立って歩けるものなのか。
 浮力の働く海中でなら原理的に動物はいくらでも巨大化できるが(それでもシロナガスクジラでの体重150トン程度が、地球の動物の限界らしい。主に巨体に血液・リンパ液を行き渡らせるには、海棲であってもむやみに大型化できないからだ)、地上では重力を全身に受けるので大きさに制約がある。
 大きすぎると、自分の重みでつぶれ、さらにそれ以前に4本脚で体重の負荷を分散させても、膝や足首の関節が故障してしまうからだ。
 シロナガスクジラは体長30メートルで約150トンとされる。するとゴジラの体重は、どれくらいになるか。ここで注意すべきは、クジラは四肢が体内に取り込まれてしまっていて体長に脚の長さはプラスされていない点だ。だから脚のあるゴジラの体重推計に単純に外挿するわけにはいかない。

◎推定体重は3000トン
 しかし写真を見ると、脚の部分を差し引いても体幹部は80メートルはありそうだ。さらに巨大な尻尾の重さをプラスする必要がある。
 ここからシロナガスクジラの体長と体重を基にシン・ゴジラの体重推算する。
 まず80÷30=2.66……である。ここで単純に2.67をシロナガスクジラの体重150トンにかけてはいけない。
 体重は体積に比例するからで、2.67の3乗、すなわち19倍をかけないといけない。
 すると、3000トン弱になる。

◎2本脚で、いかなる素材でも3000トンの体重は支えられない
 これくらいになると、脚と腰、膝にかかる負荷は想像を絶するほどになる。
 地上なら、たぶん立った瞬間に崩れ落ちる。無理して歩けば、どんなに脚を強化しても、リン酸カルシウムとコラーゲンが素材である限り、すぐに骨折してしまうだろう。
 なお動物の骨、特に脚や腕の長骨は、表面の緻密骨が殻のように固め、内部の空洞の部分を網目状に縦横に走る骨梁(骨小柱)で軽量化しつつ強靭化している。骨梁(骨小柱)は、カーボンファイバーのような機能を果たしていると思えば良い。これで軽さと強度を両立させている。
 しかしそれにも限度がある。ゴジラは2本脚で歩行しているが、その2本で、推定3000トンを支えることは物理的に不可能なのだ。南米のクモザル類のように、尾を第5の脚・腕にしている例もあるけれども(写真)、シン・ゴジラは尾を脚の補助にしていない。
 つまりゴジラ的動物は、地上では生存できない。

◎超大型であれば遺伝子をつなげることは不可能
 それにゴジラがもしジュラ紀からの生き残りだとしたら、興味深いのはどうやって世代をつなげたのか、だ。
 動物は大型になればなるほど、その身体を養うために大量の食物をとる必要がある。食物の制約のために、したがって個体数も制限される。広大なアフリカ大陸でも、数千万頭ものゾウを養うことは、そもそもできない。200万〜300万頭程度なら可能かもしれないが。ちなみに現在、アフリカゾウは減少したので、全大陸で50万頭くらいしかいないとされる。
 そうすると、ゴジラ個体群のポピュレーションは、かなり少なかったはずだ。
 さすれば、オスとメスの出会いの機会は、限られる。
 さらに個体数が少なければ、遺伝的多様性の維持が難しくなる。大型動物であれば、個体数が3桁を切れば、出会いの少なさと近親交雑の機会が増えて遺伝的多様性がさらに乏しくなることから、絶滅を免れない。

◎大型動物は絶滅しやすい
 ジュラ紀末の恐竜の大絶滅を免れた後も、哺乳類、魚類を含めて多くの大型動物が絶滅しているのは、そうした理由がある。
 だからゴジラは、どうやって世代をつないできたのだろうか。
 ちなみによくテレビのアホらしい特番で、怪獣が見つかった、なんて放送されるけれども、ありえない。
 例えばネス湖の「ネッシー」など、まともな生物学者は誰1人、真に受けていない。ネッシーほどの大型動物が、狭いネス湖で生存していけるわけがないからだ。狭いネス湖に大きな身体を養えるだけの食物はないし、遺伝子をつなげていけるだけの個体数も維持できないからだ。仮にネッシーが恐竜時代の生き残りだとすれば、なおさらあり得ない。
 ――と、そんなことを考えながら、僕は、早く『シン・ゴジラ』がテレビ放映されないかと、待っているのである。

注 容量制限にタッチしているため、読者の皆様方にまことに申し訳ありませんが、本日記に写真を掲載できません。
 写真をご覧になりたい方は、お手数ですが、http://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/201609040000/をクリックし、楽天ブログに飛んでいただければ、写真を見ることができます。

昨年の今日の日記:「バルト3国紀行42:エストニア入口のパルヌでの長い停車と旧泥風呂;紀行」
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