意外と点数が少ないし、予想以上に混雑していたために集中して鑑賞できなかったし、メモもあまり取れていないし、結果としてピンとくる作品もなかったのだけれど、美術館の中で思いがけなく長い時間を過ごしていた。
なぜ私はラファエル前派が好きなのだろう。
多分、ラファエル前派の作品には、理想化された(ある意味完璧な)ヨーロッパ文化のイメージが凝縮されているからなのかもしれない。
古代ギリシャ・ローマ神話、ぺローやグリムでお馴染みの昔話、あるいは聖書に登場する人物たち、そしてアーサー王伝説と中世の騎士たちが陶器のように美しく滑らかな肌と完璧なプロポーションで描かれていることにまずうっとり。続いて、古代遺跡、東洋趣味、美しい花々と素朴な田園風景、当時の風俗、古代や中世の美しい風俗(考古学的に正しいかどうかは別にして)が写真のようなリアルさで目の前にあることに感激。
ただそれだけが嬉しくて、私はラファエル前派を飽きずに眺めているのだろう。
印象に残っている作品は以下の3点。
チャールズ・エドワード・ペルジーニ「シャクヤクの花」:
女性も美しいが、花弁の薄さや透明感の描写が見事。舞台のワンシーンのような絵。
アルバート・ジョゼフ・ムーア「夏の夜」:
女性、背景、小道具等々、描かれているすべてが美しい。ドビュッシーの「デルフィの舞姫たち」をBGMにしていつまでも眺めていたい作品だ。
ウィリアム・ヘンリー・ハント「卵のあるツグミの巣とプリムラの籠」:
写真と見間違えそうな、ものすごくリアルな描写に驚かされる。スーパーリアリズムの先駆的作品と勝手に認定。
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