mixiユーザー(id:735114)

2015年10月23日10:57

314 view

【展覧会】 鴨居玲展(石川県立美術館)

激しく暗い悲しみと、身を切るような痛み。救いを求めつつ、救われることを拒否すべく自らを厳しく律しようとする緊張と焦燥。
自虐ではない。自分を突き放して笑えるような余裕はない。
生きることに罪悪感を持ちつつ死を恐れ、徐々に狭まる生と死との間でもがいているうちに次第に狂気にむしばまれていく・・・
絵を見ているうちに、芥川龍之介の最晩年の小説を読んだ後に感じた息苦しさを思い出した。
私自身は「繊細すぎるがゆえに生きるのが辛い」というタイプではないので、鴨居の真の苦しみは理解できない。彼が命を賭して作り上げた作品を前に、勝手気ままな感想を述べるだけだ。そして、鴨居に対してそんな自分を申し訳なく、恥ずかしく思った。「死を覚悟して成し遂げたい何かがあるか、あるいは自分の命に代えても守りたいものがあるか」という鴨居の問いに、胸を張って答えられるものが私には何もないのだ。

「出を待つ(道化師)」を使用した「鴨居玲」展のポスターが新宿駅構内に貼り出された時、あまりのインパクトに目が釘付けになった。赤い背景、赤い衣装、土気色の顔から哀愁と激情が迫ってくるような気がした。ポスターでここまで衝撃を受けることは滅多にない。東京ステーションギャラリーで開催された展覧会を見に行くべきかどうか、新宿駅でポスターを見るたびにずいぶん悩んだ。だが、「和もの、現代もの、工芸、彫刻、写真は原則見ない」という鑑賞コンセプトから外れるので、結局足を運ばなかったのだ。
今回、金沢を訪れるにあたり、旅行のためのリサーチはあまりしなかったものの、とりあえず美術館だけはと思ってチェックして、驚いた。石川県立美術館でまさかの鴨居玲、巡回中! これは見に行かなければ!!
そして、東京ではなく金沢で本展覧会を見るという選択は、結果的には正しかったかもしれない。「もうひとつの鴨居玲」と称されたミニ企画があり、メインの企画展に展示されていたものとは別の作品や遺品を鑑賞することができたのはラッキーだった。
3 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する