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2015年09月18日09:09

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【展覧会】風景画の誕生展(Bunkamuraザ・ミュージアム)

風景が背景から主題になってゆく過程を概観する展覧会だが、分かりにくい。
「絵の背景に風景を描くという発想の誕生」という側面を含んでいるものと勝手に思い込んでいたので、最初のセクションですでに風景が緻密に描き込まれた作品が並んでいることに面食らい、困惑しながらの鑑賞となってしまった。

しかし、タイトルや描かれている中心の事物ではなく、背景に注目して絵を見るという鑑賞スタイルはとても面白かった。
ついつい、絵のタイトルが示しているもの、つまり作品の中心にドン!と描かれたものに目が行ってしまうが、そのたびに慌てて、奥に描かれた風景に視線を向けると・・・そこには実に様々なものが隙間なく描き込まれていて、驚かされる。美しい風景が描かれているだけではなく、画家の豊かな想像力や遊び心がさりげなく感じられたりもする。
「なるほど、こういう絵の見方もあるのか」と思う反面、自分が今までいかに絵を見ていなかったかということにも気付かされた。

風景が背景から主題に移行していく過程で重要なポイントのひとつは、例えばブリューゲルの「イカロスの墜落」のように、「タイトルに記載されている事象が風景に溶け込んでいて、どこに描かれているのかが分からない」という絵画の出現だろう。
本展覧会ではヨアヒム・パティニールの「聖カタリナの車輪の奇跡」がこのパターンの作品の初期のものとして展示されていた。1515年以前の作。「イカロスの墜落」より40年も前。このような表現手法を最初に考えついた画家(それがパティニールなのかどうかは分からないが)の発想力に感心するばかりだ。

そのほかに印象深かった作品は以下のとおり。

レアンドロ・バッサーノの月暦画:
背景を見ようと努力しても、手前に描かれた人物たちに目が行ってしまう。それほどまでに、当時の風俗が魅力的に描かれている。

ルーカス・ファン・ファルケンボルク「夏の風景(7月または8月)」:
明るく、空気がきれいで清々しく、奥行きのある風景が実に美しい。手前の麦畑の中の花々の描き方も近代的。

カナレット「ヴェネツィアのスキアヴォーニ河岸」:
以前、ヴェネツィアを訪れた際、見ている景色に強い既視感があった。後日、それがカナレットの絵によっていたことに気付いて、ショックを受けたことがある。
いつもなら「あ〜、はいはい、カナレットのヴェネツィアね〜」とスルーしてしまうのだが、今回は絵を見ているうちに昔の衝撃的(笑)な出来事を思い出した。
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