シアターグリーンでCapitain Chimpanzee「不思議の国の3人のアリスとハートの女王」を見る。題名通り、元ネタは「不思議の国のアリス」。不思議の国、ハートの女王が「非誕生日プレゼント」を要求するなど、つまらないものを持ってくる者には死刑を宣言するなど、我儘で周囲や民を困らせている。人々は、予言の書から、3人のアリスが救世主になると期待する。ハートの女王が敵役であることは変わりないが、女王はこれが自らの夢であることを自覚していたり、設定が少しずれている。
人々の策略で、深い穴に落ちた女王は、本当に夢から覚める。現実の女王は、コンビニ店長。勝手な家族や店員たちに振り回されている。だから夢の中で仕返しをしているのだ。しかし、現実に戻っても、どこか奇妙なところがある。現実が非現実に浸食されるのは、この劇団が何度も描いている。今回は意思を持つ物語や、夢が幽霊となる設定が面白い。
自らの過去を振り返ったことで、再び夢に戻った主人公は、不思議の国に平和をもたらす。これでハッピーエンドになるかと思えば、現実の壁にぶつかる。主人公は友を救えないし、夢との懸け橋であったチェシャ猫は去る苦い結末。主人公は、子供のころはいじめを見て見ぬふりをしてしまったし、現実では負け続けている。それでも、負の感情を克服した主人公には希望が見え、後味は悪くない。
甘いかもしれないが、ろくでもない日常の中で、清涼剤となる作品だ。
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