下北沢小劇場 楽園でQuiet Quiet「楽屋」を見る。斎木享子さん客演の舞台。「かもめ」上演中の劇場の楽屋。出番を待っているニーナ役の女優が、その台詞をラップで歌う幕開けに驚く。それを見ている2人の女優。この様子も変。1人は顔に火傷があり、1人は首に血の滲んだ包帯を巻いている。舞台は現代なのに、2人は明らかに過去の人。そしてニーナには姿が見えていない。2人は幽霊と分かる。
2人とも女優だったのだが、端役かプロンプターしかやったことがない。2人はマクベス夫人の長台詞を暗誦したりするが、斎木さんとSPIRAL MOONの秋葉舞滝子さんの飄々と演じていて、おかしくも悲しい。
そこへもう1人の女優がやってくる。ニーナ役のプロンプターだったらしいが、こちらも様子が変。体調を崩していたというが、心を病んでいたらしい。「かもめ」の作者と話した、と言い出すのはどきりとさせられた。
見えてくるのは、女優という職業を選んだ女の業の深さ。志半ばで死ぬか、心を壊すか。「体中の毛穴から血が噴き出す思い」すら「蓄積」とできた女のみが生き延びる。
そして「かもめ」の台詞を、登場人物たちの心情に重ねるのが面白い。「かもめ」も劇中劇のあるメタ演劇だし、一種換骨奪胎だ。最後はハッピーエンドか、新たな地獄の始まりか、「三人姉妹」の台詞で終わる幕切れもいい。
この戯曲は、日本国内で最も多く上演されている演劇だそうだ。さすがに力がある。70分のタイトさもあって、楽しめた。
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