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2015年07月21日22:10

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幽霊塔

ちょっと話題になっている本がある。

江戸川乱歩の『幽霊塔』。

あのジブリの宮崎駿氏が影響を受けたというのだ。
岩波書店からその宮崎氏が口絵を描いたものが刊行された。
口絵はコンテを含めて16ページに渡り、それだけでじっくり読むのに時間がかかる。
なるほど、その幽霊塔体験が『カリオストロの城』に影響を与えたということか。

私は乱歩好きなので全集を持っている。当然『幽霊塔』も含まれている。
それでも宮崎氏の口絵だけでも価値があると思い購入した。
大きな本で改めて読んでみるのもよかろう、と。

初めて『幽霊塔』を読んだのは小学校二年生のときだったと思う。
講談社から出ていた少年版を読んだのだ。ポプラ社の少年探偵団物よりも先にこちらに手を出したのが良かったのか悪かったのか…。なにしろこの講談社版は少年向けとは思えぬほど表紙がおどろおどろしかったのだ。(写真右は『幽霊塔』)
最初に読んだのは『三角館の恐怖』だった。それが最初の読書体験だった。そしてその次に読んだのが『幽霊塔』だった。この二冊が抜群におもしろかったことで乱歩にハマったのだ。そしてそれは今でも続いている。

『幽霊塔』は実は乱歩のオリジナルではない。
黒岩涙香の作品の翻案いわゆるリライトなのだ。そもそも涙香の『幽霊塔』自体が海外小説の翻案である。
乱歩にはそうした翻案物がいくつかあるのだが、それが許された時代だったのだろう。もっとも乱歩は涙香の親族から翻案の許可を得ていたそうだ。
ずいぶん前に涙香の『幽霊塔』を読んだことがあるが、大筋こそ同じものの乱歩の方が肌理が細かいという印象だ。細かいところはずいぶん異なり、乱歩ならではの語り口の上手さや、怪奇趣味に溢れているあたり、さすがに非凡なところを見せている。
後半の幽霊塔内部の冒険部分のワクワクドキドキ感を煽るのはさすが乱歩であろう。

翻案ということもあり、決して乱歩の代表作ということにはならないが、私にとって思い入れの強い作品である。『三角館の恐怖』が本を読むことのおもしろさを教えてくれたとするなら、『幽霊塔』は乱歩ファンになることを決定づけたものと言える。

その同じときめきを宮崎氏が感じていたというのがなんだか不思議な感じがする。

ちなみに、三鷹の森ジブリ美術館にて「幽霊塔へようこそ展」が開催されている。来年5月までの予定とのこと。
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