ビックコミック連載新田たつお『隊務スリップ』はひどい漫画

　ビックコミック連載新田たつお『隊務スリップ』はもっとひどい漫画です。
　もし憲法９条がなくなったら―。そんな設定で日本の近未来を描いたもの。
　アメリカに追随して恨まれ、東京が核テロ（日本軍部の陰謀）に。軍が台頭し、街に失業者があふれ、徴兵制が復活されていく。　主役は、世界を終末に導きかねない超能力者の青年の活躍と彼をとれ巻くキャラたちとの新田たつおならではのギャグで包んでいます。けれども作者の新田たつおは「９条は絶対に必要との思いを込めた。関心のない若い人に読んでほしい」（東京新聞）と語っているだけに、要所に「特定内緒話保護法」「武器輸出三倍速」「集団的袋叩（たた）き権」などへの露骨な風刺が利いた表現を隠そうともしません。
　新田作品のファンは根強いだけに、こんな連載が続いたら、いまの日本に漂う危険を反米、反資本主義へあおり立て、平和ぼけを助長させる問題作品といえるでしょう。
　前作『静かなるドン』は愛読していましたが、終盤政治ネタになると作者の主張が強くなりすぎて、ギャグが洒落にならなくことが
ありました。
　ぜひ作者には、ギャグ漫画家としての本分をわきまえて、あまり政治的な主張に偏らないことをおすすめしておきます。
　どうしてもというなら、せめて同じビックコミック連載の尖閣と日本のクライシスをリアルタイムに描いているかわぐちかいじ『空母いぶき』をよくお読みになって、日本が侵略されてもいいのかという視点で連載を見直してほしいものですね。
★『隊務スリップ』第一話試し読み
http://big-3.jp/bigcomic/tameshiyomi/saisin/20131225/time/index.html