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2015年07月04日23:50

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三浦友理枝@フィリアホール

さあ、今年の目玉、ラヴェルのピアノ曲全曲演奏会第一夜。
得意のラヴェルである。

4台ピアノを用意してもらって、弾き比べて今日の1台を選んだという。

01.ラヴェル:メヌエット 嬰ハ短調
02.ラヴェル:高雅で感傷的なワルツ
03.ラヴェル:マ・メール・ロワ
04.ラヴェル:ソナチネ
<休憩>
05.ラヴェル:水の戯れ
06.ラヴェル:夜のガスパール
07.ラヴェル:ラ・ヴァルス
<アンコール>
08.ラヴェル:フォーレの名による子守歌

ひとことで言うなら凄いリサイタルだった。

難曲でしかも大曲の『夜のガスパール』の後に超難曲の『ラ・ヴァルス』を置くか?

『夜のガスパール』は20世紀以降のピアノ音楽の最高峰に位置する曲であろう。
『オンディーヌ(水の精)』『絞首台』『スカルボ』という不気味な雰囲気の3曲。ラヴェルには珍しく表現主義的な曲である。
1曲目の『水の精』からして素晴らしい。彼女のクリスタルのような硬質な美音が生きる。きらめくような水の表現は彼女の得意とするところ。この前に『水の戯れ』を置いたのは偶然ではあるまい。
2曲目の『絞首台』は暗く重い足取りに緊張感が漲っている。
超絶技巧が要求される『スカルボ』ですら彼女は美しく聴かせる。音の分解能が高い。この難曲を彼女は余裕を持って弾いているかのように見えた。磨き抜かれた美音による『スカルボ』は凄絶に美しい。彼女がどんなに強く鍵盤を叩こうと音は決して濁らない。
3年前に聴いたときよりも確実にクオリティが上がっていた。
人によっては美しすぎるというかもしれないが、いいではないか。それが彼女の『夜のガスパール』なのだから。

『ソナチネ』をよく弾いていたのは2009年から2010年にかけてだったろうか。
あのころに比べると音色のパレットが増えたというか、表現にコクが深まったというか、そんな変化を感じた。クリスタルのような音色と優れた技巧そのままにさらに上積みがあるわけだからこれは強力である。
時間の流れを感じるとともに、演奏家としてさらに高いステージに到達したことを感じた。

『ラ・ヴァルス』にしてもケレン味なく弾き切る演奏から、デカダンな雰囲気も感じられるようになった。
『水の戯れ』はいつもながらの快演。おりにふれて聴いているのでよくわからなかったが、もしかしたら最初に聴いたときとはずいぶん変化があったのかもしれない。

追いかけ続けた甲斐があるというものである。

ある意味、彼女の演奏には凄みがある。
お人形さんのような可憐で華奢な容姿からは想像できないほどのピアノを弾く。

ラヴェルのそれぞれの曲を巧みに弾く人はたくさんいるだろうが、全ての曲をこれほどのグレードで弾き切るピアニストはそう多くはいるまい。
しかも『夜のガスパール』の後に『ラ・ヴァルス』をプログラミングするピアニストなど…。

終演後に話を聞くと、むしろ前半の方が精神的にはキツかったのだそうだ。
なるほど、穏やかな曲の方が難度が高いということか。

第二夜は9月26日(土)、チケットはお早めに。
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