mixiユーザー(id:735114)

2015年06月30日09:58

449 view

【オペラ】沈黙(新国立劇場)

不協和音と複雑なリズムを多用した緊張感のある音楽。痛々しくささくれた巨大な木の十字架。長崎のキリシタン弾圧を目の当たりにしているかのような演出。
日本語の歌詞を日本人歌手が歌うからだろうか、登場人物たちの精神的・身体的苦痛がより大きく伝わってきて心を揺さぶられ、辛くて涙が出てきた。

当時の農民たちは理不尽に搾取され続けるよりはいっそ死んだ方がマシだったのかもしれない。だが、それにしても、自分の生を犠牲にする殉教とは何なのだろうか。人々を殉教に駆り立てる宗教とは何なのだろうか。身体的苦痛に耐えなければ心の安らぎは得られないのだろうか。宗教に対して怒りに似た感情が湧き上がってくるのは私が信仰をもっていないからなのだろうか。

劇場のホワイエには長崎のキリスト教の歴史を解説したパネルや踏み絵のレプリカなども展示されていた。踏み絵は意外なほど小さい。信仰を守るためだけに踏むのをも拒むということが信じられない。信仰のために死をも恐れないという考えが私には理解できないが、宗教とはこのように崇高で美しく、盲目的で残酷なものなのだろう。

ところで、自分の大切なものを踏みにじられた時、私は死を覚悟して相手に果敢に立ち向かっていける自信がない。私はキチジローの弱さを軽蔑することは一生できないだろうと思っている。



原作:遠藤周作
作曲:松村禎三
演出:宮田慶子
指揮:下野竜也
ロドリゴ:小原啓楼
フェレイラ:小森輝彦
キチジロー:桝 貴志
モキチ:鈴木 准
オハル:石橋栄実
0 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する