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2015年02月11日09:25

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映画『きっと、星のせいじゃない。』試写会レビュー

★★★★★特選
 何とこの作品、あのトム・クルーズの『オール・ユー・ニード・キル』を差し置いて、公開直後に全米1位にランクインし、様々な社会現象まで生んだ大ヒット作品です。
 FACEBOOKの公式ページのイイネが1300万件に達するなど、世界中の映画ファンの心を鷲づかみしているのです。

 その人気のワケは、まず共にガン患者のカップルが主人公で、死ぬことが医師によって宣告されている闘病生活が描かれているのに、人生が輝くとてもポジティブな心が描かれていることです。
 
 幼いころからガンを患い、自宅と病院を往復する毎日を余儀なくされていたヘイゼル(シャイリーン・ウッドリー)が、一人の青年、ガス(アンセル・エルゴート)と出会い、恋に落ちていくという本作。
 実は、このガスも骨肉腫で片脚をなくしているのでした。ても、二人はお互いに影響し合い、前向きに人生を輝かせていくところが、お涙頂戴の韓国映画や暗い日本映画とは違う点なのですね。
 ふたりの会話も深刻めいたところは一切なく、普通のティーンエイジャらしい活き活きとしたもので、時々飛び出す皮肉たっぷりのジョークには、むしろ試写会場が大笑いに包まれてしまうほど自然体の描き方だったのです。
 だから、見ている内に、いつの間にか二人が病を患っていることを忘れさせられ、観客までポジティブな気持ちになってしまうほどでした。そんな、二人の魅力がFacebookなどのSNSや口コミで大きく広がり、英語圏だけでなく多くの国々でのヒットにもつながったのも頷けます。
  
 また、恋愛作品『(500)日のサマー』で脚光を浴びたスコット・ノイスタッター&マイケル・H・ウェバーが脚本を手掛けているだけに、心に刺さる台詞がいいのです。「君に傷つけられたら本望だ。愛してるんだ。悪いけど」なんてガスのセリフには、キュンキュンしながらも涙を流してしまうこと必至でしょう。

 そんなキラリと心に残る台詞が散りばめています。なんか深いなぁ〜と思ったら、原題がシェイクスピアの戯曲「ジュリアス・シーザー」からの引用であったり、哲学者ゼノンが提唱したパラドックス「アキレスと亀」や、「0と1の間の小さな無限」といったセリフまで飛び出したり、知的好奇心をくすぐるワードも多数登場なんですね!

 この『0と1の間』の言葉どおり、確実に死が近いことが解っていても、いのちある限り愛し合ったのです。きっとその間は、時間を忘れて、ふたりは永遠の世界で愛を語り会っていたのでしょう。
 ガスは、ヘイゼルにこうも告げます。「愛は、100人、1000人と多くの人を愛せるようになることが要請されているけど、ボクは君ひとり愛せたことで充分だ」とまさにひと隅を照らすことが、すべての人への愛に繋がるようなことも述べているのです。
 普通の恋愛映画には出てこない、記憶に残る台詞ですね。

 さらにストーリー展開も秀逸。
 死期が近いことをヘイゼルは、ガスとの友達以上も恋人未満の関係にこだわり続けていました。そのために、一時は絶交しそうになることも。ガン患者同士の恋愛関係だけに、単なる恋心だけで決められないヘイゼルの臆病になってしまう気持ちの描写にとても共感できました。だからこのふたりの関係が恋人同意しに発展するには余程のきっかけが必要です。
 そこで用意されたのは、ヘイゼルがリスペクトする作家に小説の続きを聞くため、はるばるオランダのアムステルダムへガスと一緒に出向くシーン。作家には邪険に扱われるものの、そのあとの観光で立ち寄った『アンネの日記』の隠れ家で、困難の中でも希望を失わなかったアンネの生き方に励まされたヘイゼルが、恋いに対しても果然前向きに考えがガラリと変わるのです。ふたりの恋はまるで爆発したかのように急進展するところが、本作の見どころでしょうね。最高にロマンテックでした。その直前の、アムステダムの町並みをバックにしたデートシーンも素敵ですよ。
 加えて安易なハッピーエンドでは終わらないこと。
 ガスにある異変が起こり、ヘイゼルは悲しみのどん底に落とされます。予想外の進展で、画面に引き付けられることでしょう。そんな彼女を救うのが、期待外れに終わったアムステダムの作家からの手紙。偏屈な作家の中途半端な登場も、最後にはちゃんと伏線として繋がっていたのでした。
 
 ピュアな魅力が光るヘイゼルとガス。二人を演じたシャイリーン・ウッドリーとアンセル・エルゴートは、『ダイバージェント』で兄妹役を演じた経験もあり、チームワークはバッチリだったそうです。愛らしく気取りがない演技を見せたシャイリーンでしたが、実はこの作品に参加したい一心で原作者に長く熱いメールを送り、プロデューサーにもエキストラでもいいので使ってほしいと頼み込んだほど思い入れが強かったそうです。まさにヘイゼルとガスを地で行くほどの熱演を見せた二人のフレッシュな魅力に生きる力と希望をもらえることでしょう。


●Introduction
ジョン・グリーンのベストセラー小説「さよならを待つふたりのために」を基にした青春ロマンス。ガン患者の集会で出会った若い男女が恋に落ち、憧れの作家と対面しようとオランダへ旅する姿などを追う。『ダイバージェント』に出演したシャイリーン・ウッドリーとアンセル・エルゴートがカップルを熱演、その脇をローラ・ダーン、ウィレム・デフォーら実力派が固める。残り少ない時間の中で懸命に生を全うしようとするヒロインの姿に熱くなる。

ストーリー:末期ガンながらも、薬の効果で深刻な状態を免れているヘイゼル(シャイリーン・ウッドリー)。だが、学校にも通えず、友人もできず、酸素ボンべなしでは生活できない。そんな中、ガン患者の集会で骨肉腫を克服したガス(アンセル・エルゴート)と知り合う。ヘイゼルに惹(ひ)かれたガスだが、彼女に距離を置かれてしまう。ヘイゼルに振り向いてもらおうと、彼女が敬愛する作家にメールを送って返信をもらうことに成功するガス。それをきっかけに、二人は作家に会おうとオランダへ旅行に出るが……。
[日本公開:2015年2月20日]

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