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2013年08月20日23:35

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交響的イエス

過去の恩讐を越えて一堂に集まると、そこになかなか味のある音楽が展開される。
再結成も悪くはない、そう思えないこともない。
金のため、あるいは夢よもう一度といったような不毛な再結成も少なくないが、そこを見極めるのはわれわれリスナーに委ねられていると思えばいい。

イエスに関しては再結成という言い方が相応しかったことはない。
さほど長い休止期間がなかったからだ。しかし、イエスの歴史はメンバー・チェンジの歴史とも言える。なので全盛期のメンバーが集まったイエスはオールド・ファンにとっては再結成と同じように感じるのではないかと思う。

英国プログレッシヴ・ロックの代表選手イエス。
全盛期のメンバーは、ジョン・アンダーソン(vo)、スティーヴ・ハウ(g)、クリス・スクワイア(b)、リック・ウェイクマン(key)、アラン・ホワイト(ds)、だろう。いやアラン・ホワイト加入前のビル・ブラフォードがいた頃だ、という意見もあるだろうし私自身そう思わなくもないのだが、ロック史上最高レベルの前任者と常に比べられつつも、長いことイエスの屋台骨を支え続けたアラン・ホワイトこそイエスのドラマーと言っていいのではないかと思うようになった。
そしてロック少女のますみちゃんが神と崇めるクリス・スクワイアが唯一イエスを離れたことのないメンバーとして君臨している。

もちろん、イエスの長い歴史について語るつもりはない。そんなことを始めたら本が一冊できてしまう。

さて、今世紀に入りこの全盛期のメンバーでの映像作品がいくつかリリースされている。結成35周年記念の充実のライヴがあり、ジャズやブルースのような雰囲気さえ漂わせるアコースティック・ライヴなど、興味深いものが多い。
中でも2001年収録のシンフォニック・ライヴがとてもおもしろい。キーボードのリック・ウェイクマン不在の頃で、だったらオーケストラと共演してしまおう、ということだったのかどうかわからないが、とにかくそういうツアーだったのだ。ちなみに、トム・ブリズンという若手がサポートとしてキーボードを弾いている。
オケはわりと小編成で、どうやら学生オケらしい。

みんなジジイと言うにはまだ気の毒な年齢だろうが、見た目はともかく、演奏は少しも衰えていない。
ジョン・アンダーソンは相変わらず少年のような声で理想郷を歌い上げるし、クリス・スクワイアはアグレッシヴで多彩なベースを弾く。アラン・ホワイトはやはり上手いドラマーだ。見た目の変化がいちばん大きいのがスティーヴ・ハウで、まるでザンバラ髪の落武者のようである。月代(さかやき)すらあるではないか。しかし、何種類ものギターを使い分ける唯一無二のスタイルは健在。

プログラムは盛りだくさんで、『危機』『錯乱の扉』『儀式』といった20分を超す長尺曲が含まれている。
オケは出しゃばらない。従来のキーボードのパートをオケに置き換えたという感じだ。しかし、それがなかなか良い。ことに複雑な構成の長尺曲では見通しが良くなって曲の構造がわかりやすくなっているように感じた。
しかも、オケのメンバーがみんなノリノリなのだ。イエスのファンというわけではないだろうに、心からこの共演を楽しんでいるという風なのだ。練習やリハーサルの過程でイエスの音楽に触れ、その素晴らしさを知ったということなのだろうか。
そのご機嫌なオケを背にオッサンたちも気持ち良さそうに演奏している。
さらに、オケのほとんどが女子(男子は金管のみ)で、しかも美人率が高い。それゆえか、オケを映すショットも多い。
落武者はいいから美女を映せ、などと乱暴なことを思ったりもする。(ごめんよハウ爺)

でもって、驚いたのがアンコールの『ラウンドアバウト』。
演奏が始まるやいなや退いていたオケのメンバーがステージに繰り出してきてノリノリで踊り始めるではないか。アラン・ホワイトなんか目の前で踊る女子たちを嬉しそうに眺めながら叩いていたよ。
プログレッシヴ・ロックの名曲がダンス・ミュージックに変貌した一瞬。なんだか感動的な場面だったなあ。

これはいい作品だ。
映像で見てこそである。

しかし、イエスの音楽はおもしろい。
ガッチリした構造をしているから、最もクラシック的と言えるのかもしれない。
変拍子炸裂の難しい曲を余裕綽々で演奏してしまうのだから凄まじい。

そして、アラン・ホワイト。
ビル・ブラフォードと比べること自体が間違っているような気がしてきた。
そもそもタイプが違うのだ。独特のサウンドで挑戦的なドラミングで孤高を行くブラフォードに対し、彼はもっとゆったりしたビートでR&B的なノリをイエスにもたらした。もちろん技巧も確かで変拍子も難なくこなす。ジョン・アンダーソンの歌うユートピアには彼のおおらかなドラミングが必要だったのだ。

長らくイエスを聴いてきたが、ここにきてようやくアラン・ホワイトの良さがわかってきた。

まだまだ知らないことや気付かないことがたくさんあるんだな。
そう思うと年を取るというのも悪くないように思える。
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