第三火曜はオペラシティ名物リサイタル｢B→C｣。
連続女流管楽器奏者第３弾にして、連続東京交響楽団女流奏者第２弾は、クラリネットの近藤千花子。
知っているようで意外に知らないのがクラリネット。
調によっていろいろな種類があり、バス・クラリネットとの違いは見た目にもわかっても、ほかはよくわからない。中にはほとんど使われないものもあるらしい。
クラリネット属の楽器のいろいろ、などというレクチャー・コンサートがあれば聴いてみたいものだと思う。
閑話休題。
近藤千花子：クラリネット
寺嶋陸也：ピアノ(*)、チェンバロ(**)
桑田歩：チェロ(+)
今日も最前列をゲット。
管楽器の場合、ブレスの音、息の漏れる音、キーを押さえる音、そうしたいろいろな音が聞こえてくる。演奏ノイズというやつだ。人によってはただのノイズとして嫌うこともあるだろうが、そういうのが聴けるのもライヴならではである。私はむしろそうしたノイズも含めて演奏だと思う。それに特殊奏法は近い方がよくわかる。なので積極的に近いところで聴きたいし観たいと思うのだ。
01．J.S.バッハ：協奏曲 ト短調 BWV1056a（**/+）
02．モルター：クラリネット協奏曲第４番 ニ長調（**/+）
03．バルトーク(寺嶋陸也編)：ミクロコスモスより、（+)
・第６３番『つぶやき』
・第７９番『J.S.B.へのオマージュ』
・第１１３番『ブルガリアン・リズム１』
・第１１４番『主題と転回』
・第１１５番『ブルガリアン・リズム２』
・第９７番『ノットゥルノ』
・第１２３番『スタッカートとレガート２』
・第１２４番『スタッカート』
・第１２５番『舟遊び』
・第１３０番『田舎のおふざけ』
04．マルティヌー：クラリネットとピアノのためのソナチネ（1956）（*）
＜休憩＞
05．マントヴァーニ：クラリネット・ソロのための『バグ』（1999）
06．エサ＝ペッカ・サロネン：クラリネットとチェンバロのための『ミーティング』（1982）（**）
07．細川俊夫：エディ − クラリネットのための（2009）
09．バーンスタイン：クラリネットとピアノのためのソナタ（1941/42）（*）
＜アンコール＞
10．レーガー：ロマンス ト長調（*）
盛りだくさんで楽しかった。
バッハの協奏曲の原曲はチェンバロ協奏曲第５番。
バッハの時代にクラリネットは存在しない。意外に歴史の新しい楽器なのである。バッハのメロディーをクラリネットで聴く。ちょっと不思議な感じ。
第２楽章の有名なメロディー、リュート・ストップを用いたチェンバロと、チェロのピツィカートを伴奏に、クラリネットの音色が美しかった。
モルターはバッハより10年くらい後の人らしい。クラリネットの最初期くらいらしい。
D管のクラリネットは珍しいそうだ。なので、貴重な経験だったようなのだが、よくわからない…。小さいということだけはわかった。
チェンバロのミスタッチが目立ってしまったのが惜しかったな。
バルトークの『ミクロコスモス』はもともと子どもたちのために書かれたピアノのための小曲集。
それをクラリネットとチェロのためにアレンジしたもの。
クラリネットとチェロという音色の組み合わせがおもしろい。
マルティヌーはチェコの作曲家。新古典的なちょっと不思議な作品をたくさん書いた。
このソナチネも明るさと翳りが同居したような不思議な曲。伸び伸びとしたクラリネットの響きが魅力的。
マルティヌーはもっと聴かれていい作曲家だと思う。結構好きです。
チェンバロとピアノの入れ替えがあったりで、この時点で１時間超え。
後半は現代作品ばかり。
マントヴァーニはあのムード音楽の人ではなく、フランスの現代作曲家。
『バグ』はいわゆる、ソフトウェアに潜むバグのことらしい。あ〜、忌々しい言葉だ。
おもしろい作品だと思うが、この後の細川作品と比べてしまうとね。。。
サロネンはあの名指揮者である。
クラリネットの生まれた時代を考えると、チェンバロとの組み合わせというのは珍しい。
激しさと静けさを超絶技巧で描く。サロネン、やるな。
北欧(フィンランド)生まれだからということでもないのだろうが、静寂の表現が上手い。シベリウス以降の伝統なのだろうか。
クラリネットの技巧の安定ぶりには恐れ入る。力演でした。
ここでもチェンバロのリュート・ストップがいい感じ。
フルート独奏のための『線�機戮�印象深い細川俊夫のクラリネット独奏曲。
この人の作品には侘び寂びと同時に哲学的な瞑想を感じる。切り込むような鋭さと、透明な抒情性。
このあたりの深みが先の『バグ』との大きな違いだと言えそうだ。
特殊奏法も交えた難曲だと思う。お見事でした。重音に聴こえるようなところもあって、どうやって吹いているのか不思議。
作曲者の細川さんが来場していた。
最後はバーンスタインの若い頃のソナタ。もちろんあの名指揮者で『ウエスト・サイド物語』の作曲者レナード・バーンスタインである。
ジャジーでメロディックな雰囲気のソナタ。第２楽章の５拍子のノリが気持ちいい。最後を締めるに相応しい曲だった。
やはりクラリネットのことは知っているようで知らなかったのだなあと思う。
そういう点でも楽しめたが、演奏も高い集中力で聴衆の耳を捕らえる優れたものだった。
何よりクラリネットの多彩な音色を自在にコントロールできる技術はさすがである。
この秋の管楽器３連チャン(フルート、ファゴット、クラリネット)はかなり聴き応えがあった。
来月はヴィオラ。
もうすぐ2013年度の予定が発表になるな。
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