ＬＥＯ

デビューしたときに写真を見て、その目が印象に残っていた。
アーモンド形のちょいつり目。もし目力というものがあるとすれば、相当強いだろうなと思わせる目だった。
女優の田中麗奈に似ていると思った。

ただJ-POP系のCDに手を伸ばすのは二の足を踏む。
シングルをリリースするたびに気になりはしたものの、試聴することもなく忘れてしまっていた。

先週だったか、にょっきから「家入レオちゃんが好き」と聞かされたのだ。
そういえば、注目なさっているマイミクさんがいらっしゃったことも思い出した。
であれば、聴かねばなるまい。

ちょうど1stアルバムがリリースされたばかりだったので、この前の日曜にショップで試聴してみた。3曲くらい出だしを聴いて買うことに決めた。

家入レオ(いえいり・れお)、まだ十代のシンガーソングライターである。
誕生日前なので17歳とのこと。

しっかり歌えるシンガーのようだ。声もよく伸びる。ロックっぽい歌い方だ。
曲もなかなか良い。バラツキが少ない。
歌詞が独特。恋愛っぽい歌詞はさほど多くなく、閉塞した社会に抵抗しようとする内容のものが少なくない。彼女にとって歌うということは自分の居場所を確認するためのものなのかもしれない、などと思う。
「愛なんていつも残酷で、もう祈る価値ないよ」という歌詞の曲がある。甘ったるい恋愛ソングの多い音楽界に一石を投じるような過激さだ。十代でそう言わなければならない心の闇を思う。
一筋縄ではいかない歌手のようだ。
見せかけの友情を壊してやりたい、という内容の曲もある。
欺瞞を許せない潔癖さと、しかしそれに抗えない脆さ。その葛藤が整理しきれないままに顔を覗かせる。
世界に対して自分はどう向き合っていけばいいのか、そんな彼女の心が反映されているような曲が多い。かといって、重苦しいわけではなく、軽めのロックビートで歌われていく。中には屈託のないキュートな曲もある。ポジティヴな曲がいいアクセントになっている。

あの目はやはりタダモノではなかった。

ただ、初めてのアルバムということもあったのだろう、若干角を削った仕上がりになってしまったのではないかという気がする。
牙は見せたが、爪は隠している。
そんな感じか。

お、いい声じゃん、歌もなかなか上手いじゃん、って聴いていると、そのディープな世界に囚われてしまうことになりそうだ。
批判精神を持っているあたりは「ロック」である。

ロックにこだわると言っていたSuperflyのアルバムが残念な出来だったのとは対照的だ。

余談になるが、Superflyこと越智志帆の声と歌は素晴らしい。ロック・スピリッツを持ったシンガーであることに異論はない。ただ、楽曲の魅力に欠けるのだ。いくら声が良くても、ヴィンテージ・ロック・サウンドを作っても、楽曲が良くなければ、やはり画竜点睛を欠く。このあたりでソングライティング・チームやプロデュースを見直す必要があるのではないかと思う。
ま、個人的な意見だが。

大量生産大量消費の音楽界において(J-POPだけではなく洋楽もそう)、ワタシのような年寄りの心に残る音楽は少ない。
なのでこういう骨っぽい子にはがんばって欲しい。
世界を救え、人類みな兄弟、頑張れば何でもできる、そんな押し付けがましい似非人道的な歌詞は全くない。安っぽい感動で満足できるなら、家入レオはやめておけ。

尾崎豊の影響を受けたというのもよくわかる。
とんがり具合がよく似ている。不条理な世界に喘ぐ感じがいい。もっとも、尾崎豊が叫びなのに対し、レオは歌になっている。
実は私は尾崎豊のことは買っていたのだ。凡百の似非ロック・バンドが滑稽に思えるほど、彼のスピリッツはロックだった。夭折が惜しまれてならない。

もちろん尾崎豊と家入レオは違う。それでいい。
彼女は彼女の道を歩めばいい。まだまだ荒削りなところも多分にあるが、それは可能性というものだろう。

にょっきは詞の世界を全て理解しているとは言い難いだろうが、彼女は耳がいいからね。
小学生とはいえ、彼女の意見は信用できるぞ、と。
家入レオに共感する小学生…、ちょっとコワイ気がしないでもないが。

ま、それはともかくとして、家入レオはいい。大量消費にならないきらめきがある。
個性があるようで実は無個性な連中が多い中で彼女のとんがり具合は貴重だ。
J-POP界に限らず玉石混交なんだよね。
その中から玉を探し当てるのはなかなか難しい。面倒くさくてやめてしまうというのが実情だ。
しかし、見つかるときには簡単に見つかるものでもある。
これも縁。探しているときには見つからず、なんでもないときにふと出会う。

1994年12月生まれの17歳。
ふんだ、20世紀生まれということでは一緒だろ。