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2011年04月01日23:12

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あっちの世界にイッちゃった作曲家

今に始まったことではないが、スクリャービンとシマノフスキにメロメロである。
全くロシアっぽくないロシアのスクリャービンと、カメレオンのように作風を変えたポーランドのシマノフスキ。
どちらも官能的な音楽を書いたという共通点がある。ぶっちゃけ違う世界にイッっちゃていると言ってもいい。ことにスクリャービンは半分以上恍惚の世界の住人だったのだろうと確信している。作風をめまぐるしく変えたぶんシマノフスキの方がやや理性的に見える。そうはいっても、ヤバイという点ではあまり変わらないかもしれない。

しかし、彼らの音楽はあまりにも美しい。

スクリャービンは新しい音楽への扉を開いた作曲家としてドビュッシーやシェーンベルクと同列に語られることも多い。徹底的に官能的な響きを引き出した誇大妄想のようなオーケストラ曲と、星がきらめくような美しいピアノ曲を書いた。4番目の交響曲とされる『法悦の詩』は耳で聴くポルノとも言われている。
スクリャービンの信奉者だったシマノフスキはやたら難しいピアノ曲をたくさん書いた。わけのわからんシンフォニーも書いた。ほかにもいろんな分野の作品を書いている。後期ロマン派から神秘主義・印象主義、やがては民族主義にその作風は変遷したが、官能的な響きを持つという点ではブレがない。作風を変えつつもシマノフスキの個性というのは明確なのである。

ただし、これらの音楽はいわゆるゲンダイオンガクと言われるものに近い。
なんだかんだ言っても20世紀の音楽なのである。

話は変わるが、私が三浦友理枝というピアニストに興味を持ったのは次の2点である。
ひとつは、音が綺麗なのでスクリャービンを弾いたら合うだろうなと思ったこと。次に、リサイタルのプログラムにシマノフスキが入っていたこと。
可憐なルックスというのはたぶん5番目か6番目くらいの理由だろう。
今でこそスクリャービンを弾く人は多くなったが、シマノフスキを弾く人は今でも少ない。
シマノフスキにはまったのは、彼女がこまめにリサイタルで彼の作品をいろいろ弾いていたからというのが原因のひとつであることは間違いない。

スクリャービンのピアノ曲も卒倒しそうなくらいの難曲ばかりだが、シマノフスキもやたら難しい曲を書いている。2番のソナタは作曲者曰く「悪魔的に難しい」とのことだし、3番だってそれに匹敵するくらいの難しさではないかと思う。

相当な技巧派でなくては弾きこなすこと自体が難しい。しかし、技巧に任せて弾き倒してしまうと台無しなのだ。最上級の技巧を要求するくせに、単なる技巧派では弾きこなせない。しかも磨き抜かれた美音を求められる。力技では全くダメ。
そういう点でも彼らの曲は稀代の難曲揃いなのである。

シマノフスキのソナタは2番と3番が知られているが、後期ロマン派的情緒に溢れた1番もいい曲である。これもまた難しそうではあるが…。

私は三浦友理枝というのは世間が思っている以上に凄いピアニストなのではないかと考えている。
ショパンが得意。それはよくわかる。ラヴェルが得意。それもよくわかる。とはいえ、ショパンやラヴェルを得意にしているピアニストはたくさんいる(もちろん、その中でも秀でた存在だと思うが)。
しかし、暗譜でシマノフスキを自在に弾きこなすピアニストがどれだけいるというのだ。シマノフスキのスペシャリストというわけではない。数多くのレパートリーの中にシマノフスキが含まれているというに過ぎない。
『仮面』も3番のソナタも暗譜だった。破綻なく、それどころか豊穣な音世界を展開して見せた。

実はシマノフスキの大曲は女流には難しいのではないかと思っていた部分もあるのだ。
逆にスクリャービンについてはバリバリと豪快な演奏よりも、清潔感のある抒情的なアプローチの方が相応しいと思っていたので、むしろ女流の方が向いているのではと感じていた。

その三浦友理枝が来週の土曜(4月9日)にスクリャービンとシマノフスキをプログラミングしたリサイタルを行なう。(もちろんそれだけではない。リストやシューマンの有名曲もあり)
両方とも幻想曲というのは偶然ではあるまい。全く有名な曲ではないが、どちらも素晴らしい曲であることは保証する(ただし、ゲンダイオンガク的ではあるが)。ことにスクリャービンの曲はまだ調性感が残っているので聴きやすい。
こんな曲をホール側がリクエストすることなどないだろうから、たぶん彼女が弾きたくて選んだのだろう。
昨年のB→Cの刺激的で強烈なプログラムが大好評だったこともあって、隠している爪をもう少し見せてくれるようになるのではないかと期待している。

スクリャービンについてはようやく音楽史上の功績が正当に評価されつつあるように思う。
しかし、シマノフスキについては辺境の作曲家くらいの扱いしかされていないように感じる。実際にはバルトークやストラヴィンスキーらと同等に扱われてもいいくらいだと思うのだが…。

まあ、能書きはともかくとして、耽美的で官能的な音楽を好むなら、スクリャービンとシマノフスキはオススメである。
ただし、何度も言うが、ゲンダイオンガク的な響きなので、とっつきはよくないかもしれない。それでも聴き続けていればすぐに馴れる。
そう、ツンデレな女の子だと思えばいいのではないだろうか。曲の中身を考えると、ヤンデレかもしれないが…。
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