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2011年01月25日12:40

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【バレエ】ベルリン国立バレエ「チャイコフスキー」(22/23日)

「チャイコフスキー」は、
ロシアの著名現代振付家のひとり、エイフマンの作品で、
彼の本拠地サンクト・ペテルブルクでの初演は1993年、
ベルリン・バレエでの初演は2006年です。
新国ファンには「アンナ・カレーニナ」の振付家の作品、
と言った方が早いでしょうね。(^^)

スピーディな展開とアクロバティックな振付が、
まさにエイフマンの作品という感じでしたが、
「アンナ」に比べると振付がややコンテ寄りで、
古典好きの私には、好きと嫌いのボーダーライン上の作品でした。

ここを下にスクロールさせると「あらすじ」がありますが、
http://www.nbs.or.jp/stages/1101_berlin/tchaikovsky.html
抽象的すぎて、ピンときませんよね。(^^;)
でも、実際の舞台も、実はこんなイメージなのです。

幕が上がると、舞台中央にベッドが置かれ、
ひとりの人物が苦しげに横たわっています。
病床のチャイコフスキーというわけです。
そして2幕最後は、彼が息絶えるところで幕。

人は死に際に、走馬燈のように人生がフラッシュバックする、
と言われますが、まさにそんな感じの展開で、
チャイコフスキーと彼の妻ミリュコワ、
パトロンであるメック夫人という実在の人物と、
経済的援助を受けるため偽りの作品を創る自分と対の存在、
本音の「分身」、および理想の存在である「王子」たちが、
チャイコフスキーの人生と彼の複雑な心情を織りあげていくという、
とても抽象的な内容なのです。あらすじを書いた人は、
よくまとめたなぁ、と見終わったあと感心していました。(^o^)

チャイコフスキーは職業作曲家ですから、仕事は仕事と割り切り、
むしろプロとしての誇りを持って作曲に臨み、
食うために己の感性を犠牲にしていたとは思えないのですが、(^^;)
まぁ、それはそれとして、カラボスとその手下、ドロッセルマイヤー、
ロットバルト、白鳥群舞なども登場し、2幕の(楕)円卓を使った、
男性主要キャストと男性群舞たちの踊りは圧巻です。(^^)

お師匠さまは22日と23日、私は23日の公演を観たので、
まずはお師匠さまの22日の感想です。(23日以下は私の感想です)

★22日/第1幕

チャイコフスキー:ウラジーミル・マラーホフ
分身/ドロッセルマイヤー:イブラヒム・ウェーナル
フォン・メック夫人:エリサ・カリッロ・カブレラ
チャイコフスキーの妻:ナディア・サイダコワ
王子(若者/ジョーカー):ディヌ・タマズラカル
少女:セブネム・ギュルゼッカー

王子役がヴァルターくんからタマズラカルくんに変更。どうしたのかな。

怒涛のようなスピード感で、あっという間に1幕が終わってしまった。
ゲネプロの長さが嘘のよう。

今日のチャイコフスキー分身はウェーナルさん。
浅黒い肌の精悍な風貌で、色気のあるダンサー。
ドロッセルマイヤーもカッコいい。

分身役は、チャイコフスキー役よりひとまわり体格が大きいのが、
配役条件の一つなのかな。
チャイコフスキーの後ろで操ったり影響を及ぼしたりする表現が多いので、
体格が同じくらいだと被ってしまって効果的ではないからね。

メック夫人はカブレラさん。
ファーストキャストのクノップさん同様に、銀のパラソルの扱いが上手い。
小物というには大きいパラソルを、振り回しているように見せずに、
体の一部のように操る技術は相当なものじゃないのかな。

クノップさんについては流石〜と思ったけど、カブレラさんも伸びてるんだなぁ。
踊りも滑らかで、しなやかで品の良い控え目な艶もある。
しっとりとしたこういう役も出来るんだなぁ。強い役が似合うと思っていたから、意外。

チャイコフスキーの妻役はサイダコワさん。
邪気のない輝く笑顔と、狂気と情念の差が怖い。
エイフマンが描く人間の美しくはない感情、情念というか激情というか、
狂気を孕んだ激しい感情を一手に引き受けていた役が見事だった。

★22日/第2幕

何とも重い後味の作品だね。本当に『アンナ・カレーニナ』みたいだ。
『ミス・サイゴン』のような、やり切れない感じではないんだけど。

カブレラさんがメック夫人を踊ると、
憂いの表情が艶やかさを増して、色っぽくなる。
そして、強さや激しさを表現すると、美しさより勢いや迫力に振れる感じ。
これはこれで、彼女の特徴かな。

ウェーナルさんも、その傾向があるかも。
でも二人とも魅力的に見えるから、これで良いのだろうな。

サイダコワさんとマラーホフさんがすごいのは、
狂気を孕んだ互いの感情のぶつけ合いのような振付の時でも、
乱暴に振り回してる感じにはならないところ。
しかも、振付をこなすのが大変そうと思うよりも先に、圧倒されて引き込まれる。

少女役のギュルゼッカーさんは、少女というには色っぽい。
でもまあ、14歳で艶やかという、
フィギュアスケートの庄司理沙選手みたいな子も現実にいるからね〜。
タマズラカルくんとの踊りも盤石。現地では組んでいるのかな?

チャイコフスキーの生涯について詳しければ、もっと深く味わえるのだろうね。
観た感じ、チャイコフスキーの狂気(と言っていいのかな)は、
自虐的に自己に向かうタイプで、
チャイコフスキーの妻の狂気は初めは他者に向かい、
最終的には自己も激しく破滅させる、攻撃性の高いタイプに見えた。

喜びは生きてないと得られないけど、
死をもってしか得られない安らぎ、というのもあるんだろうね。
マラーホフさんは、ソロルといいチャイコフスキーといい、
死をもって救われる役というのが似合うなぁ。
繊細で脆そうな雰囲気があるからなのかな。

ロイヤルの『うたかたの恋(マイヤーリンク)』もそうだけど、
見応えあるけど消耗する演目だね。
それを連日主演するダンサーの気力と体力って、並大抵じゃない。
脆いどころか、本当はタフなんだねえ。

★23日

配役は、チャイコフスキーがマラーホフさんで変わらず、
分身にデュディクさん、メック夫人がクノップさんに変更。

「シンデレラ」の時にも記したとおり、ここのダンサーたち、
マラーホフさんを除くと、いささか華やかさには欠けますが、
レベルは高く見応えがあります。(^^)
ただ、タマズラカルさんは、連投の疲れが出てしまったのか、
彼本来の出来ではなかったのが残念。

2幕冒頭には、「くるみ割り人形」のモチーフを借りて、
理想王子の理想伴侶にサレンコさんも少しだけ登場します。
今季、彼女を目にするのはこれが初めてでしたが、
お師匠さまが推奨されていたとおり、その成長ぶりには驚きました。

この様子だと、おそらく群舞も着実に伸びてくるでしょうから、
次回の来日公演も楽しみです。(^^)

       *     *     *

今回の公演で特筆したいのが、
オケの東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団です。

「チャイコフスキー」で使われている曲は、
公式サイトにあるように、すべてチャイコフスキーの作品で、
1幕では交響曲の5番が主題になっています。

私、学生時代はこの5番の熱烈な愛好者で(今も大好きです。(^^))、
古今東西の演奏を聴きまくったものです。
だもんで、これまでの日本のバレエ・オケの経験則から、
演奏にはまったく期待していなかったのですが、
予想に反して、気合いの入った良い演奏でした!(^^)v

さすがに世界の一流どころと比べると、
厚みや音の広がり、繊細さは一歩及びませんが、
つい、そういうところと比較したくなる、
耳が自然にクラ・モードに切り替わるほどの出来だったのです。

東京シティ・フィルは、
NBS主催の公演などでバレエ・ファンにもお馴染みのオケで
東フィルよりは安定した演奏をしてくれるところですが、
正直なところ、ここまでやってくれるとは思っていませんでした。

観覧後、その旨をお師匠さまに語ったところ、
お師匠さま、意味深な微笑みを浮かべつつ、
会場入り口で配られていたチラシの中から一枚を取り出しました。

...東京シティ・フィルの案内で、表題には、
「チャイコフスキー交響曲全曲シリーズ」とあります。

今年6月定演の3番と4番を皮切りに、
11月に5番とピアノ協奏曲の1番、
年明け1月に1番と6番、3月に2番ほかを演奏するのだとか。
目端の利く誰かが、今回のバレエ公演は楽団のPRになると気付き、
それに楽団側と奏者たちが応えたのでしょう。

前回の日記で取り上げた東京ニューシティは、
聴き終えたあと、ここの定演はパスかな、
という気持ちにしかなりませんでしたが、
「チャイコフスキー」を観たあとは、
チラシのチャイコ・シリーズ、聴いてみたくなりました。(^^)

普段のバレエ・オケでは、やはり本気ではなかったのか、と思うと、
シティ・フィルよ、お前もか、とやや複雑な気持ちにはなりますが、(^^;)
少なくとも今回の「チャイコフスキー」に関しては、
バレエは踊りと音楽が融合して初めて真価を発揮するということを、
改めて観客に知らしめてくれたのではないでしょうか。(^^)

バレエ・ファンも、どうか前奏が始まる前に居住まいを正し、
終演時もオケの演奏が完全に終わるまで、拍手は控えてくれませんか。
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