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2010年06月25日23:48

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若冲アナザーワールド@千葉市美術館

何を隠そう、って隠してないけど、伊藤若冲のファンである。
豪華絢爛極彩色の肉筆画は観る者の心を捉えて放さない。『動植綵絵』30幅はいずれもが洋の東西を問わず至高の美術作品であることに疑いの余地はない。
若冲というと、やはり色彩的な作品に注目が集まるのは仕方がないことだろう。

しかし、モノクロの水墨画の達人でもあった。

そんな若冲に焦点を当てた展覧会が千葉市美術館で開催されている。
題して「伊藤若冲アナザーワールド」。

いよいよ会期末(明後日27日まで)なので、午後休を取って、東京駅でたぬ〜と合流して行くことにした。

モノクロなのに色彩的とはこれ如何に。
細密画かと思うような細かさは若冲ならではだが、そうかと思えば大胆に簡略化された線の力強さも併せ持つ。墨の濃淡も鮮やか。筆の運びが潔いというふうに思う。
そうかと思うと、可愛らしい人物画があったりする。洋風に言えばデフォルメということだろうか。
遊び心があったのだなあと思う。ユーモラスな作品も少なくない。
可愛らしい動物(カメ、カエル、鶏のヒナ、コイ、ナマズ、エビ、などなど)がたくさんあった。

実物を見ると、筋目描きと呼ばれる独特の技法の冴えがよくわかる。

写実的なようで実際は幻想画のようだという若冲の特徴はここでも見られる。
若冲は此岸ではなく彼岸を描いたのだ。作品に描かれたのは若冲の考える極楽浄土なのだろう。
私は勝手にそんなふうに思っている。

それゆえに若冲に強く惹かれる。
若冲は現実の向こう側を見ようとしてたのではないか、と。

そして、目玉は最近になって発見された『象と鯨図屏風』である。
真贋の議論はまだ尽くされていないのかもしれないし、専門的な見解はわからないが、若冲であって何ら不思議はない。というか、若冲以外の誰に描くことができたのだろう、という思いを強くする。鯨は背中の一部を出しているのみ。潮を吹いているので鯨とわかる程度。象などは全くもって写実的ではない。どことなくユーモラスでさえある。ほとんど黒と白のモノクロに近い世界。
海の最大の生物と陸の最大の生物を対比させたのもおもしろい。まさに若冲らしい発想ではないか、という気がする。

異国情緒というか別の世界を思わせる『樹花鳥獣図屏風』も目玉のひとつ。
プライス・コレクションで有名な升目描きのもうひとつのバージョン。これらも真作か偽作かの議論がかまびすしい。別の升目書きによる『白象群獣図』は真作ということらしい。
若冲らしからぬところがいろいろあるのだそうだ。

どうでもいいよ。

かりに若冲の真作でなかったにせよ「すごい」作品であることに変わりはないだろう。
プライス・コレクションの作品も観たが、やはりすごかった。それに観ていて飽きない。楽しいのだ。
それでいい。

いい展覧会だったと思う。
切り口がユニークだし、新たな若冲像を見せてもらったという気分だ。
ちょっと無理をしてでも行ってよかった。
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