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2010年06月21日23:02

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リーズ・ドゥ・ラ・サール嬢の新譜

フランスの若手ピアニスト、リーズ・ドゥ・ラ・サールの新譜がリリースされた。
アルバムとしては通算5枚目にあたる。今回も国内盤でのリリースはないが、輸入元が帯を付けている。
日本ではほとんど知られていないが、すごいピアニストだ。1988年生まれというから、本当に若い。ライナーの写真なんかを見ると、まだあどけなさが残っている。童顔ゆえかもしれないが、少女と言った方が似合いそうな容姿をしている。

さて、今回はショパン・アルバム。バラード全曲と、ファビオ・ルイージが指揮するドレスデン・シュターツカペレとのコンチェルト第2番のライヴ。
聴き応えのある盤に仕上がっている。

バラードは先だってラ・フォル・ジュルネで実演を聴いたばかり。
スケールの大きな抒情的表現に感心したものだが、CDでもその印象に隔たりはない。作品に同化するかのような思い入れたっぷりの演奏なのだが、自己陶酔型の演奏とは一線を画している。説得力があると言うより、すっと心の中に入り込んでくるような演奏だ。悲劇的な予兆を感じさせる切迫感と緊張感の漂う演奏でもある。
しかし、彼女のピアノはなんと柔らかくまろやかな音であることか。
過去のアルバム全てそうだし、実演で聴いてもその印象はかえって強まったから、彼女の個性ということになる。
メカニカルな演奏とは対極にある。Somethin' Elseの感じられる演奏だ。

コンチェルトについても同様のことが言える。
この曲は2番の番号が与えられているが、実際に作曲されたのは1番よりも前になる。出版が後になったために2番になったというわけだ。
1番が古典的なコンチェルトの形式に則って書かれているのに対し、2番はもっと自由に書かれている。そのせいか、曲自体としては2番の方が優れているように思う。旋律的な魅力でもひけを取らないと思うが、人気の点では1番に遠く及ばないようだ。
ちなみに、この曲が母体となって書かれたのが夜想曲第20番として有名な曲。姉のコンチェルト練習用として書かれたというのが通説となっているようだ。
それはともかく、ここでも彼女の暖かな音色が素晴らしい。ことに第2楽章のリリカルな表現には溜息が出てしまうほど。あまりにも優しく、儚く美しい。
コンチェルトという曲の性格上、技巧的な面が表に出てくるのは仕方のないところだが、彼女の演奏にはそうした外面的演奏効果を感じない。曲と真摯に向き合っているという印象で、派手さはないが聴き飽きない。もう少しシャレっ気や遊び心があってもいいと思うが、それをこの若さで望むのは酷というものだろう。
ドレスデン・シュターツカペレの深みのある音色とのコンビネーションもいいようだ。

彼女にはまだまだ可能性があるのだろうな、と思う。
あと何年もすれば世界を代表するピアニストになっているかもしれない。
海外での状況はよくわからないのだが、今でも相当注目されているのは間違いないだろう。
リーズ・ドゥ・ラ・サール(Lise de la Salle)、この名前は覚えておいて絶対に損はないはずだ。
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