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2009年11月10日22:38

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タスク(牙)

先日思い立ってフリートウッド・マックの『タスク(牙)』というアルバムを買ってきた。
大好きなアルバムである。
以前CDも持っていたはずだが、たぶん処分してしまったのだろう。もともとLPで2枚組み。CD化のときに1枚に収めるために1曲だけ短く編集されてしまっていた。それに腹が立ったのを覚えている。その後、編集なしの完全版としてリリースされたのは知っていたのだが、ビッグネームゆえ近々紙ジャケ化されるだろうと思っていたら、一向にその気配がない。
で、無性に聴きたくなったというわけ。

フリートウッド・マック(Fleetwood Mac)、もともとはイギリスのブルースバンド。メンバーが代わるたびに、音楽性をポップに変化させ、70年代中盤にはビッグヒットを連発するスーパーグループになっていた。『噂』はロック史上に残るほどの売上を記録。その次の作品がこの『タスク』である。
この頃が全盛期とされる。
スティーヴィー・ニックス(vo)、リンジー・バッキンガム(g,vo)、クリスティン・マクヴィー(key,vo)、ジョン・マクヴィー(b)、ミック・フリートウッド(ds)という布陣。
リード・ヴォーカルの取れるメンバーが3人いるのも珍しければ、うち2人が女性というのも珍しい。
スティーヴィー・ニックスは妖精と言われていた。可憐な容姿からそう呼ばれたのだが、妖精にしてはすごいガラガラ声だ。妖精というより魔女だろ、いいとこ小悪魔だ、とツッコミを入れたくなってしまうほどなのだが、これが結構クセになる。なぜだかチャーミングに聴こえてくるから不思議なものだ。後の女性ロッカーに与えた影響も大きく、シェリル・クロウなどが彼女に対するリスペクトを公言している。
ロックでないとか、ポップすぎるとか、当時はいろいろ批判されもしたが、『ファンタスティック・マック』や『噂』といったアルバムが売れちゃったんだから仕方がない。しかも文句が付けようがないほどのものだったのだ。
それだけにバンドのアーティスティックな側面を表に出したと思しき『タスク』は賛否両論だった。レコード会社の判断は「これは売れない」だったらしい。ジャケットも地味だし、2枚組だし…。確かにセールス的には前2作には及ばなかったし、失敗作と見る向きも少なくなかった。当時はその世評に憤慨したものである。もっとも今では大衆性と先進性とを共存させた傑作として認められているが、そんなの当時からわかりきったことではないか、と言いたい。
もっとも、これはロックとしてのフリートウッド・マック最後のアルバムと言えるかもしれないのだが…。ポップ過ぎると批判されたことに対してまさに「牙を剥いた」作品だったと思う。

私のプログレ好きを知る人には、フリートウッド・マックが好きと言うと、たいてい意外がられる。確かにプログレとの接点はほとんどない。ハード・ロックとの接点も少ない。
しかし、そんなのは関係ない。いいものはいいのだ。

全20曲。捨て曲無しだ。アイデアとイマジネーションに溢れている。
リンジー・バッキンガムが9曲。残りを女性2人、クリスティンが6曲、スティーヴィーが5曲と分け合っている。それぞれの曲でそれぞれがリード・ヴォーカルを取る。クリスティンの暖かなヴォーカルも魅力的だ。バッキンガムの曲はいずれもポップ・ロックの可能性を模索したもので、今聴いても刺激に満ちている。
そして、ボトムを支えるリズム・セクションが素晴らしい。派手さはなく、むしろ地味だが、それだけに味わい深い。だからこそ華やかなフロントが映えたとも言える。
自分にとっては彼らの最高傑作だ。

このアルバムがリリースされた1979年という時代を覚えている。
ビッグネームが傑作をものにした後の沈黙を経て、相次いで新作をリリースした年だったのだ。『ホテル・カリフォルニア』の後のイーグルスの『ロング・ラン』、『プレゼンス』の後のレッド・ツェッペリンの『イン・スルー・ジ・アウト・ドア』、それに『噂』の後のこの『タスク』である。さらにピンク・フロイドの『ザ・ウォール』のリリースもあった。
70年代の最後はそんな年だった。

LP4面に5曲ずつという綺麗な配分も気持ちよかった。今では盤を替えることなく75分間通しで聴ける。便利だと思う反面、盤をひっくり返したりするのがちょっとしたアクセントになっていたことに気付く。今でも5曲目から6曲目に続くときとか、昔の盤面の替え時になると違和感を覚えることがある。わざわざそこでポーズを入れたくなるくらいだ。
面倒ではあったが、あれはあれでよかったのかもしれないな、と思う。

しかしだ、フリートウッド・マックの紙ジャケ化遅すぎるぞ!

YouTubeでスティーヴィー・ニックスがリードを取る『Sara』を見つけた。
たぶん、当時に近い映像だと思う。途中で切れている感じだが…。


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