mixiユーザー(id:3696995)

2009年09月15日23:48

1565 view

小池郁江(フルート)@オペラシティ・リサイタルホール

今日は小池郁江嬢というフルート奏者のリサイタル。東京都交響楽団のフルート奏者だ。
オペラシティ主催の「B→C」という新進の奏者を迎えたリサイタル・シリーズ。もうずいぶん長く続いている。Bはバッハ(Bach)でCはコンテンポラリー(Contemporary)、つまりバッハから現代まで。バッハの曲と現代曲を少なくとも1曲ずつ組み込むという条件を満たせば、後は自由にプログラミングすることができる。
いい企画だと思う。

注目の奏者がたくさん出演していたのだが、なかなか来ることができなかった。
今回は春先にスケジュールを見た瞬間「これは行かなくては」と早々にチケットを手配した。

昨年11月の東京文化会館での「世紀末ウィーンとシェーンベルク」と題されたコンサート。注目は幸田浩子嬢(ソプラノ)を招いた『月に憑かれたピエロ』。ピエロのイメージを一新するチャーミングな歌もさることながら、フルートの素晴らしさも印象的だった。そのフルートを吹いていたのが、今日の小池郁江嬢だったのだ。
こういう縁は大事にしておくときっといいことがある。

01.バッハ:フルートと通奏低音のためのソナタ ホ短調 BWV1034
02.アナセン:シルフのバラードと踊り
03.吉松隆:デジタルバード組曲
<休憩>
04.ルーセル:笛吹きたち
05.ファーニホー:カサンドラの夢の歌(flute solo)
06.カルク=エーレルト:ソナタ 変ロ長調
<アンコール>
07.アナセン:スケルティーノ

ピアノ伴奏は鈴木慎崇(すずき・よしたか)氏。

バッハのソナタはともかく、知らない曲ばかりだ。。。
初めて聞いた名前の作曲家もいる。。。
こういうのもおもしろい。

旧式のフルートはピッチが安定せず、機能的にも難があったため、古典派からロマン派にかけての時代にはフルート用の曲はほとんど書かれていない。ベーム式と言われるキーメカニズムが実装された近代になってから、ようやくフルートの本領が発揮できるようになった。したがってフルートのレパートリーの多くは現代曲なのだ。というわけで、フルートのリサイタルに行くと、たいてい知らない曲と出会える。

彼女のフルートはゴールド製でH足部管付き。

チェンバロとチェロ(もしくはガンバ)で聴き慣れているバッハのソナタは、やはりピアノだと違和感がある。と思っていたが、意外にそうでもない。普通にピアノ伴奏付きのフルート・ソナタとして聴ける。曲の完成度の高さと懐の深さだろう。中音域の柔らかい音色が素敵だ。高音もきらびやかだが軽くない。いい音色だ。
『月に憑かれたピエロ』での印象は間違いではなかった。

どれも聴き応え十分だったが、『デジタルバード組曲』はおもしろかった。温かな中音域とキレのある高音域が見事だった。フラッタータンギングも細かくてとても美しい。ホイッスル・トーンもあったな。
ルーセルの曲はフルート曲としてというよりも、曲そのものの完成度の高さに驚く。7拍子の揺らぎが妙に心地いい。彼女は神話的な世界をストーリー性豊かに描いていた。

ある意味今回最大の聴きものは『カサンドラの夢の歌』だったかもしれない。まさにコンテンポラリー、いわゆる現代音楽だ。フルートのあらゆる奏法を駆使し、微分音頻発という見るからに難曲。いくつかのピースから成り、曲順が指定されていないという、チャンスオペレーションの一種とも言えそうだ。初めて聴いた曲なのでよくわからない。よくわからないが、おもしろかった。集中して、見て、聴いた。これはたぶん音だけだと魅力の全ては伝わらないだろう。口の動き、キーを叩く(押さえる、ではない)音、微分音を出すための首の角度、などライヴならではの「見る」おもしろさがある。

クラシック系のフルート奏者で思い入れが強いのはオーレル・ニコレと高木綾子嬢(もう女史と言うべきか)。ここでまたいい奏者と出会えた。オーケストラの団員だから、リサイタルはそんなにないのかもしれないが注目していきたい。彼女のフルートを聴くために都響を聴きに行くというのもありかもしれない。インバルがよく指揮しているから、マーラーがいいかも。

アルバムも出して欲しい。できれば無伴奏で。
その際はバッハの『パルティータ』とヴァレーズの『比重21.5』と武満の『エア』は是非お願いしたい。武満は『ヴォイス』もいいな。あと、今回のファーニホーの『カサンドラの夢の歌』も入れてほしい。

なお、今回のリサイタルはNHK-FMで放送されるらしい。放送日は未定とのこと。

写真は今回のチラシ。美人さんです。
0 4

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する