戦争は悲惨だから良くないと主張する人にお勧めできる映画でした。
逆に戦争にある種の憧れや、思想信条が右寄りな人が観ると、げんなりするかもしれません。
端的に言うと、キレイに脱色された戦争映画ではなく、腐臭やナパーム、火薬の良い香りがする映画です。
物語は、2部構成で前半が新兵教育、後半は地獄の戦場となっており、部隊のみんなから臆病者、疫病神と蔑まれ変人扱いされた主人公が、地獄の戦場で味方を次々と助ける姿に「神の使徒(天使)」と崇められ、物語のラストには、「彼の祈りが終わるまでは前進できません。」と言わしめる、そんな英雄譚です。
見どころは、文句なしのリアルな戦争描写で、火薬増し増し、ナパーム大盛、血糊ドバドバと、こんな景気のイイ映画久しぶりに観ました。
しかも、戦争映画の傑作と言っても差し支えない「プレイベート・ライアン」ですら再現しなかった、死体をネズミが齧る描写や蛆のわく死体や群がるハエなど、4DXじゃないのに匂いを感じられるレベルですごかったです。
それから、メタルギア風の敵から隠れながら味方を助ける描写は面白かったです。
日本軍の描き方も秀逸で、敵にも事情があって…という軟弱な心情描写や日本市場にアピールするような配役も無く、ただただ沖縄を守る狡猾な敵として描かれていました。
特に衛生兵(赤十字の腕章)を狙うとか、白旗揚げて油断させて手りゅう弾放り込むとか、一点の曇りなく敵でした。
叫び声や単語以外日本軍(敵)にしゃべらせず、最後も「切腹」により抵抗が終焉したことを表現するとか、語り口としてもさっぱりしていて良かったです。
それから、前半の新兵訓練所での闇討ちシーンで、闇討ちした奴らを見せないけど、明かりが点くと、マッチョないじめっ子タイプの男がベットから起き上がる描写入れるとか、すごくうまい演出でした。※闇討ちしたのは、その他大勢の仲間。
これは余分なことですが、良心的兵役拒否を調べたところ、「アメリカでは兵役の代替業務である市民公共サービス (CPS) に従事した。」とあり、これが事実なら戦場に行かずとも国に貢献する仕組みができていたことになります。
ちなみに、当時の大日本帝国では兵役拒否者は特高警察により逮捕・収監されたということなので、国家としての戦争に臨む姿勢がそもそも違ったと言わざるをえないです。
※当時のアメリカは現代(いま)と違い(思想信条の異なる)他者を取り込む度量があったということ。
そして、映画では敵としか描かれませんが、ハクソーリッジ(前田高地)を守備していた日本軍の一つである歩兵第22連隊は、愛媛県松山市で建軍された日本陸軍の歩兵連隊で、「伊予の肉弾連隊」と畏怖された精鋭部隊だそうです。
実際、白兵戦は「肉弾連隊」の二つ名に恥じない壮絶な描写でした。
最後、監督について触れさせてもらうと、メル・ギブソンは人格の最低な男で、アル中+妊婦や女を殴る+飲酒運転+暴力沙汰多数など、普段の生活で関わりたくないタイプです。
でも、映画監督としての技量は本当に確かで、若干宗教色強めなところを差し引いても素晴らしいと考えます。
※主人公が神に尋ねた時のある回答は、胸が熱くなりました。
とても地上波ゴールデンタイムでは放送できないため、劇場で鑑賞するのがお勧めです。
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