「我々は宇宙人」
これは、これまでMVなどを手がけてきたアニメーション作家・門脇康平による劇場版長編アニメデビュー作。
声の出演は坂東龍汰、岡山天音、山崎天など。
公式サイト:
https://nothingnew.film/wearealiens/
平成のある田舎町。内気で普通な少年・翼は、小学三年生の春のクラス替えで、校内の人気者で“特別”な暁太郎と出会い、親友になる。暁太郎の発想、絵や工作の上手さ、それに行動力……翼にはない“特別”が、眩しかった。
学校の帰りの寄り道、とりとめのない会話、夕暮れの別れ……それは本当に“特別”な時間だった――だが、時と共に、その日常は変化していく。
やがて、暁太郎は学校内で浮いた存在となり、妙な噂や冷たい視線が彼を囲んでゆく。そんな中、翼も、ある出来事をきっかけに暁太郎と距離をとるようになって……
本作は、門脇監督の少年時代の経験に基づくオリジナル作品で、企画・脚本・監督・絵コンテ・キャラクターデザイン・作画監督・美術監督・色彩設計・編集と、自ら製作工程の多くに関わる、強烈な作家性を以て作られている。
実際、リアルな背景美術に、実写と見紛うばかりの自然描写、リアルさと漫画的デフォルメのバランスが絶妙で、細かく描きこまれた手書きのタッチを重視したキャラクターによるアニメーション映像は、正に、これまでにない個性を放っている。
リアリティのある動きはロトスコープによるが、全てがそうではない……アニメならではの動きは手書きで描かれるし、CGも勿論使う、主人公の10歳からの15年の成長と変化を見せて行くと言う内容、10歳当時から繊細で複雑な感情の動きを見せるなど、これはこれでアニメでなければ描けない世界を見せるのだ――これは一見の価値あり、近年追い上げの激しい中国・韓国のアニメを、クリエイターの個性で突き放した感じがする。そして、こうしたアニメーション表現が出来る、と言う事が、日本アニメの強さでもあるのだろう。
物語は、“普通”な主人公の翼と、才能と個性に恵まれた“特別”な存在、暁太郎の15年を描くもの。
翼は、その“普通”さ故に“特別”な暁太郎に憧れるのだが、その格差が時に恐怖や嫌悪にもなる“違和感”を覚えさせ、その違和感が、少しずつすれ違いを生み、ある出来事をきっかけに距離を置くようになる――だが、それが誤解とすれ違いでしかなかった、と言う事に後で気づく痛みと悔恨……それで終われば、ほろ苦い青春エピソードで終わるのだが、本作は、そこから視点を変えて時間を巻き戻し、暁太郎の視点で、孤立し、全てを失った彼のその後を描くのだ――孤立と絶望が、彼の個性と才能を潰し、“特別”は“異端”とされてコミュニティから排除され、やがてセルフネグレクトの結果、自らどん底へと落ちて行く……こんな事が人の才能の芽を摘み、人生を狂わせてしまうのか、と言う驚きと子供社会の残酷さ――それが、門脇監督の経験から生み出された、と言う所に、本作を作り上げた“異才”が抱える側面を見たように思うし、物語には、そんな驚きと痛みだけでなく、それを突き付けてくる衝撃がある。
エピローグは、そこから更に10年後を描く――あの“出来事”も暁太郎の中で昇華された事に揺さぶられた心も着地するし、ラストシーンでタイトルを回収するのも見事としか言い様がない。
これは非常に見応えのある青春映画であり、同時に、日本のアニメーションの到達点のひとつでもある……これは、傑作だ。
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