これは、凪良ゆうの2度目の本屋大賞受賞作でもある同題小説を、「正体」の藤井道人監督が、横浜流星×広瀬すずのW主演で映画化したラブストーリー。
瀬戸内海に浮かぶ島に京都から転校してきた青埜櫂と、島育ちの井上暁海。お互い、家庭に問題を抱え、孤独に生きて来たふたりが恋に落ちるには、それほどの時間はかからなかった。
高校卒業後、櫂は、作画を担当する久住尚人と共に、マンガでの成功を夢見て東京に行くが、暁海は、母を残して櫂について行く事は出来なかった。
やがて、櫂と尚人のマンガは大ヒットし、派手な暮らしをするようになる……その一方で、島から離れられない暁海とはすれ違いが生まれると共に、心の距離も開いて……
これは、運命が引き寄せた男女の15年に及ぶ物語……自分は、藤井道人監督を、世間の評価に反して懐疑的に見てしまうのと、横浜流星と広瀬すずが17歳からの15年をひとりで演じる、と言う事にいささかの無理を感じて危惧していた。
だが、映画は、よく出来たメロドラマで、心配は杞憂だった――これは、原作の力もあるし、主演2人に寄る所も大きいと思う。藤井監督、映画のテクニックは確かなのだから、変な演出や無理目の描写をせず、こうした感じに仕上げてくれれば文句も言わずに済むのに……
そんな映画を支えた主演の2人、さすがに高校生役には違和感もあった(何せ、自分は広瀬すずが十代の頃のあの無敵の“キラキラ感”を見てしまっているので)けれど、役作りは見事なもの。特に、病魔に侵された櫂を演じた横浜流星の減量っぷりは大したもの、と感心した。
あと、アイドルらしさを消し去り、不健康な肥満体となった尚人を演じた松村北斗にも驚かされた。
物語はメロドラマではあるけれど、恋愛が中心ではない。勿論、櫂と暁海の2人の関係性が物語の中心ではあるけれど、それを揺さぶるのは、決して恋愛感情ではなく、お互いを取り巻く状況、そして立ち位置なのだ――24歳、その力で成功を掴んだ櫂は、暁海が見上げる“星”だった。だが、その8年後には、暁海が、櫂の“星”になる――いや、暁海は最初から櫂の“星”だったのだ……眩い成功が、その輝きを隠していただけで……
更に、櫂と暁海、それぞれの母親との関係、そして、櫂にとっての尚人、暁海にとっての北原先生と言う、恋愛関係ではなく人生のパートナーとなる人物を配して、人と共に生きる“人生”と言うものを描いているのもいい。
最後、櫂は、「尚人以外と組んで物語を書く事はない」と言っていたのに、原稿を編集者に託す――でも、これは櫂がその言葉を違えた訳ではない。それは、物語ではなく、暁海への長い長いラブレターであったのだ、と鑑賞後に気づいて目頭が熱くなった。
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