これは、「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」、「そして、バトンは渡された」でもタッグを組んだ、監督・前田哲、脚本家・橋本裕志による、日本で初めて「セクシャル・ハラスメント」を争点に裁判を闘った弁護士たちの実話に着想を得たヒューマンドラマ。
出演は、綾瀬はるか、ファーストサマーウイカ、松本穂香ら実力派が揃った。
日本がバブル景気に浮かれていた1989年。女性だけの法律事務所で、お金にならない案件ばかりを受けてしまう弁護士の朝日道子は、上司により性的な噂話を広めされるなどの嫌がらせを受けて辞職に追い込まれた上原恵の相談を受けた。
名誉棄損で上司と会社を訴えたい、と言う恵に、朝日弁護士は、性差別による人権問題として提訴する事を主張――それは、これまで日本では前例のない、「セクシャル・ハラスメント」を巡る裁判となった。朝日の助手を務めていた新人弁護士の藤野栞は「勝ち目がない」と反対して事務所を辞めるが、支援者を集め、弁護団を結成した裁判は、社会的にも注目されるものになって行く……
「セクハラ」と言う言葉が「オバタリアン」と共に、新語・流行語大賞に選ばれた1989年は、日本の女性の社会進出の節目のひとつとなる年だろう……この映画は、その年に起きた日本初の「セクハラ裁判」を描いて行く。
1989年と言えば、自分も既に会社勤めをしており、当時の事はまだ鮮明に覚えている。机の上の山積みの書類や、職場でもひっきりなしに吸われるタバコ……そうした時代を感じさせるディティールには懐かしい思いにさせられるし、ファッションもよく当時を再現している。女性のボディコンスーツ、肩パッドでいからせたスタイルは、女性の社会進出の象徴でもあり、だからこそ、上原恵が頑としてスタイルを改めないのも頷ける。
尚、当時の女性のファッションの再現度としては、上原恵を演じたファーストサマーウイカに軍配が上がるだろう……綾瀬はるかの方は、メイクもかなり現代的で、いつもの綾瀬はるかそのままのように思えた。
また、本作は日本映画には珍しい法廷劇だが、裁判シーンの演出には疑問を覚えた――まず、この裁判は地方裁判所で行う民事裁判であり、映画のような立派な法廷で行われるものではないし、弁護士が歩き回って熱弁をふるう事なども日本の裁判ではまずないだろう。
判決が出た際に、「勝訴」と書かれた紙を裁判所の前で広げる、と言うのもあり得ない(だって、映画では支援者・関係者共傍聴席に居たのに)……これにはさすがに白けてしまった。
日本では法的劇が多くないだけに、アメリカ映画を参考にしたせい、とも思えるが、せっかく、40年前の時代をリアルに再現しているのだから、中心となる裁判シーンもリアルにして欲しかった所だ。
何れにしても、このテーマに正面から取り組んでエンターテイメントにしよう、と言う姿勢は高く評価したい。
男性としてはいささか居心地の悪い物語ではあるが、それでも、「正しさ」も、「時代の風」も、この件については女性たちにあるのだから……
ただ、残念なのは、裁判での相手が小さく、苦労の割には得るものが少なくて、カタルシスに乏しい事……それでも、今尚続く男女格差と各種ハラスメント問題に繋げる、最初の取り組みとしての価値が薄れるものではないのだが……
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