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2025年08月17日21:13

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映画『リロ&スティッチ』

『リロ&スティッチ』(アメリカ)
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実写化されたスティッチの可愛さには驚いた。架空の生物に対してリアリティを求めるのは少し奇妙かもしれないが、毛並みや質感の表現は見事で、ぬいぐるみが発売されたら買ってしまいそう。
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監督はストップモーションアニメで愛しく切ない不思議な貝の物語『マルセル 靴をはいた小さな貝』(2023年)を手掛けたディーン・フライシャー・キャンプ。A24でデビューした新たな才能をディズニーが躊躇なく起用する英断は素晴らしい。独特の温かさとユーモア、切なさを巧みに融合させ作品全体に優しい雰囲気をもたらす。
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アニメ版のストーリーを基盤にしながらも、実写化に合わせたアレンジが各所にあり終盤の見せ場であった空中戦活劇を大胆にカット。リロ(マイア・ケアロハ)の姉ナニ(シドニー・アグドン)を軸足にして、人々との交流に時間を割り振り焦点を修正したところに潔さがあり、水が苦手なスティッチの弱点と、泳ぎが得意なナニの長所を活かした終盤の事件展開は非常に工夫されていて感動のクライマックスになっている。
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一方で肝心のスティッチのキャラクター性が薄くなっているのは残念。だがこれは敢えて意識された理由があるとも考察できる。2002年のアニメ版当時はスティッチの知名度はゼロからだった。当初は見た目も醜悪に見えたし、序盤の破壊衝動の限りを尽くす増悪な振る舞いには好感が持てなかった。知能指数の限りを悪知恵に使い、最初にリロに接近するのも、愛玩動物のフリをして自分の盾に利用しようと企んでいたのだ。しかし今回の実写版では、既にキャラクター人気が固定されているスティッチのアイデンティティの変化過程を、改めて描くことは難しいうえに意味がない。
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過去のアニメを観ていない子供たちもスティッチはよく知っている。1作目のような「わるい子」から「いい子」に変化していく過程に観客の感情が揺り動かされる可能性は極めて低いので、本作のスティッチは悪事を企む憎々しさは冒頭の宇宙空間戦の段階ですら程々に抑えられており、地球でリロと初めて出会う保護犬センターの時点で既に感情に腹黒さがない。リロと出会ってからの破壊衝動もあるにはあるがアニメ版ほどではない。家をめちゃくちゃにするのも1回だけなのだ。結果としてスティッチがリロとの出会いによって感情が変化していく過程描写は薄くなっている。
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そのため今回は不要と判断されたのであろう絵本「みにくいアヒルの子」に自分を重ねて落胆するシーンは完全にカットされた。これは個人的には非常に残念で、他にもアニメ版では『メン・イン・ブラック』(1997年)のオマージュキャラだったコブラが、今作では現役CIAエージェントと決め打ちされていて、ラストで宇宙から飛来する議長とも初対面のため過去の因縁が無い。このようなサイドストーリー妄想が膨らむお遊び要素が削除されたことで世界感は寂しくなっている。ガントゥ大尉を登場させなかったことも含めて、アニメ版の名シーンがいくつかカットされ、ジャンバも完全悪役になったことでスティッチを生んだ親心を思わせる異質な偏愛話も希薄になった。
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改変で最も良くなった要素は冒頭にも挙げたナニの描写。彼女は両親を亡くしたリロと同じ立場でありながら、働きながら育児をするヤングケアラーとしての苦悩を抱える。アニメ版では大団円のラストで万事ハッピーエンドに見せるのだが、実はナニの厳しい生活状況は何も変わっていなかった。今回はリロとの気持ちのすれ違いで心が荒むエピソードを継承して現代のリアルな家族像を反映しつつ、新キャラとしてデイヴィッドの祖母トゥトゥを登場させ、最後にナニがカリフォルニアの海洋学校へ留学するという物語がしっかりと解決を導きだした。彼女の努力と犠牲が報われる結末はとても深く心に響く。
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台詞や字幕に“家庭崩壊”という言葉を使わない配慮も現代風だった。プリークリーとジャンバが変装ではなく人間の姿に変身するのもSF的&コメディ要素的に上手くなっていて、特にプリークリーの人間体は本当に同一キャラにしか見えない。そして今作でも使われる名曲「Hawaiian Rollor Coaster Ride」でサーフィン場面を魅せる臨場感は実写ならではで、映像とのコラボレーションが見事に調和しいてクオリティも絶品。
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全米では想定以上の観客動員を達成したことで、早くも続編の製作決定が発表された。原作の魅力を尊重しつつ工夫を盛り込むことで、家族や友情の温かさをより一層に詰め込んだ作品として、失礼ながらディズニーでは久々の傑作と感じた。ハワイに行けばこのモフモフの実写版スティッチに会えるのだろうか?
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