同じ題材なのに、ちゃんと別の味があるのがいい。
凄腕の殺し屋が、ボスから「殺し禁止」で一般市民として暮らせ、という無茶ぶりをされる。
この設定だけでもう強い。
実写版は岡田准一主演で、これはこれで実に面白かった。
ただ、アニメ版はアクション一辺倒ではないぶん、また別の質感の面白さがある。
笑いの間とか、妙な生活感とか、「殺し屋なのに日常に馴染もうとしているズレ」がじわじわ効いてくる。
アニメ『ザ・ファブル』は、レンタルDVDで1巻から6巻まで、つまり1話から13話まで見た。
これが困ったことに、かなり面白い。
7巻から12巻もすぐ見たいはずなのに、むしろ少し間を置きたくなるくらい面白い。
なにしろ、そこまで見たら終わってしまう。
「続きが気になる」と「見終わりたくない」が同時に来る、あの妙な状態である。
コミックスを買うのもよい。だが本棚も人生も有限である。その点レンタルはありがたい……と思ったら、DMMにはレンタルコミックスまであるらしい。物欲と収納力と読書欲の三すくみである。
それにしても、『ファブル』は実写版もアニメ版も、バイト先「オクトパス」の堅気の社長が実にいい味を出している。
ああいう人が出てくると、作品世界が急にやさしくなる。
実写版では佐藤二朗がやっていて、これがまた実にハマっていた。
「この人、たぶん善人なんだろうな」という安心感と、「でもちょっと変だな」という味が同居していて、たいへんよい。
……と、そんなふうに思っていたのに、なぜかYouTubeにこんなものを発見した。
【全25話】ザ・ファブル 全25話 期間限定イッキ見!【公式アニメ全話】
https://www.youtube.com/watch?v=QH342ioINmk&t=1638s
いや、ちょっと待て。
レンタルDVDで「終わるのが惜しい」などと情緒を育てていたこちらの都合はどうなるのか。
公式で全25話をまとめて無料公開とは、ずいぶん気前がいい。
多分このままだと、今日明日で25話まで見てしまう。
見終わりたくないと言いながら、見られる場所があると見てしまう。人間は弱い。
しかし、公式はいったいなぜこんな無料サービスをするのだろう。
新規ファン開拓なのか、原作や配信への導線なのか、あるいは「とにかく一度見ろ、話はそれからだ」という強気の布教なのか。
たしかに、あれは見たら原作も気になるし、実写版もまた見たくなる。
無料公開が宣伝として機能する、という判断なのだろう。
それにしても困る。
こちらは「少しずつ楽しもう」と思っていたのに、公式が全力で一気見を勧めてくる。
ありがたい。ありがたいが、ありがたすぎて困る。
ここうして私は、見終わりたくないと言いながら、たぶん近いうちに完走してしまうのだろう。
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