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2026年01月25日06:53

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「長安のライチ」感想

 これは、唐の時代に実在した“ライチ大使”を題材に書かれた、中国人作家マー・ボーヨンによる小説を、「熱烈」のダーポンが監督と主演を兼任して映画化したもの。

 唐の都・長安で下級官吏として働くリー・シャンデー。計算が得意な上、真面目で規則に煩いシャンデーは周りから煙たがられていた。
 そんなある日、楊貴妃の誕生日を祝うため、皇帝から「嶺南の生ライチを宮殿に届けよ」との勅令が下る――生のライチは数日しか日持ちせす、千里(数千km)の彼方の嶺南からは急いでも数週間を要する。つまり、出来る訳がない。だが、出来なければ首が飛ぶ。そんな任務だから、リー・シャンデーに押し付けられ、彼は暗澹たる気持ちで嶺南の地に向かい、上司と同僚は、厄介払いが出来たと安堵しつつ送り出したのだが……

 これは、正に、<ミッション・インポッシブル>に挑む男の物語なのだ。
 出来る訳がない仕事に対し、シャンデーは諦める事無く、保存技術を工夫し、輸送ルートを開拓し、それを実験しては確認し確立させて行く……これは、モノづくりのプロセスとして実に真っ当であり、それを正面から描くのだけでも面白いのだが、ドラマとしても、そうした努力を積み重ねる事で、長安では嫌われたシャンデーの誠実な人柄が認められ、仲間が出来て行く、と言うのもいい。

 そうした努力の結果、生ライチを11日保存出来る事が出来るようになり、輸送ルートも14日まで短縮した……そして、シャンデーは、あと3日詰めるのに、唐の国力を使う事を決意する――現金なもので、「出来る」と判った途端、唐の宰相も協力すると言い出した……しかし、それで、シャンデーは国家の横暴さを知る事になるのだ。
 宰相の代理となったシャンデーは手続きなしに、物事を動かせるようになり、皇帝と朝廷に忖度する行政機関は、惜しみない協力を申し出るが、そのしわ寄せは全て人民が背負うのだ。
 更に権力闘争がシャンデーを襲い、ライチを運ぶ旅路は、地獄の道と化す……
 
……と、まぁ、ドタバタコメディのように始まった映画が、最後に見せる様相がとんでもないもので、そこに国家の横暴と、支配者の恣意によって振り回され、苦しめられる庶民を描き、主人公のシャンデーに、
 「民を蔑ろにし、強権を振り回す国は滅ぶ」
 とまで言わせるのだ――これを彼に言わせたのが、彼の恐妻であったと言うのも泣かせる――これは中国映画としてはギリギリに近い、攻めた描写だと思う。

 これは、軽妙な笑いのあつコメディでもあり、モノづくりの映画でもあり、歴史スペクタルであり、アクションもあれば、深い人間ドラマも見せる、様々な要素が盛沢山の大変見応えのある映画。
 これは面白い、そして、傑作。 
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