かわいそうな世代かどうかは、私たちが決めること。
『この夏の星を見る』(日本)
コロナ禍により行動を制限された状況で、貴重な中高生時代を迎えた若者たちを描いた青春群像劇。短めのカットを積み重ねていく独特の演出スタイルが、不安定だった記憶の断片を繋ぎ合わせていく過程のようで、終盤に向けて静かで不思議な感動を呼び起こす。原作は直木賞作家・辻村深月の同名小説。土浦(茨城)・渋谷(東京)・五島(長崎)という三つの舞台を往還しながら、それぞれの地域に暮らす中高生たちの姿を追いかける。

本作は7月4日の公開後、口コミやSNSで話題となり上映館がじわじわと拡大。渋谷に上映がきたのも公開1ヶ月後だった。9月末現在も大手のTOHOシネマズ等でロングランが続いており、Z世代に静かなブームが起きているという。登校や部活動が制限されていた2020年の春から夏。人同志の交流制限や進路への不安に揺れる日常を背景に、何気ない会話や放課後の静かな時間が、この非常事態特有の不安な感情としてにじみ出てくる。

物語の始まりは砂浦高校天文部2年生の溪本亜紗(桜田ひより)。リモート会議を活用して天体観測をする競技「オンライン・スターキャッチコンテスト」の発案だった。離れた地域の生徒同士がZoomやLINEを介して、星空を共有しながらレンズに天体を捉えるスピードを競う。東京の中学生・中井天音(星乃あんな)は、廃部となったサッカー部に失望していた安藤真宙(黒川想矢)を理科部に誘う。顧問の森村先生(上川周作)がスターキャッチコンテストに関心を抱いて亜紗と電話でやり取りしたことをきっかけに、コロナ禍でも可能なオンライン開催の構想が具体化。天音と真宙も参加へ心を傾けていく。

舞台は長崎・五島列島へ。佐々野円華(中野有里)は、コロナ禍でも営業を続けざるを得ない実家の旅館のせいで、島の人々から冷たい視線を浴びていた。親友の福田小春(早瀬憩)は変わらず寄り添ってくれたが、彼女も家族の反対に遭い、円華のもとを離れざるを得なくなる。孤立する円華に声をかけたのは、離島留学で五島に来ていた武藤柊(和田庵)と小山友悟(蒼井旬)。柊と円華は天文台の星空観賞会に参加し、そこで才津先生(近藤芳正)からスターキャッチコンテスト開催を聞き心を動かされる。離島留学生ながらコロナで東京に足止めされていた輿凌士(荻原護)も、リモートでの協力を申し出た。

土浦の亜紗は天文部顧問の綿引先生(岡部たかし)の了承を得て、Zoomによる説明会を企画。天文部で出会い、すぐに意気投合していた飯塚凛久(水沢林太郎)とスターキャッチコンテストへの参加準備を進めていくが、凛久はどこか焦ったように急ぎ足で望遠鏡を自作しており、その姿が亜紗には気がかりだった。凛久の抱える秘密とは? それぞれの想いを胸にオンライン・スターキャッチコンテストは実現に向けて動き出す――

淡々とした日常描写は地味ながらも小津的で、その積み重ねの長い抑制後に迎えるコンテスト本番シーンでは、抑えてきた感情が一気に解放され “離れていてもつながれる” という熱量が観客側にまで注ぎ込まれるカタルシスに転化する。土浦・渋谷・五島のそれぞれ異なる場所で起きていることが、お題の星を介しながらの素早いカット割りと中継で、同じ空間を共有している錯覚を起こさせる演出が素晴らしい。

コロナ禍を背負うことでネガティブに時間を奪われだけに見えていた世代が、その制約を逆手にとって自ら新しい輝きを見出していく過程。不可避の外圧を不幸な停滞とせず、新しい共同性を生み出す契機として肯定へ導くパワーが漲る。静かな熱量を帯びたクライマックスは、Z世代には実体験と重なる共感となり、大人世代には彼らの青春は決して空白ではなかったという確信を与えてくれる。

年配者ですら過去に経験のない喪失感や焦燥感に見舞われたあの年の出来事。更に人生経験の浅い中高生達が、そこで出来ることを考えた先に見えてきたもの・・・それがこの作品タイトルの “この夏” の意味に繋がっている。見上げた夜空はどこまでも広く、どこから誰が見ても同じ星を追っている。ティーンエイジャーのかけがえのない経験と出会いの物語を自ら掴み取った主役たち全員に、共鳴せずにはいられない。
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<『カリガリ姉妹』『この夏の星を見る』『顔を捨てた男』>
<『蘭島行』『リライト』『スーパーマン』>
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