『DOG DAYS 君といつまでも』 (韓国)

韓国発。犬を介して人の繋がりをハートフルに描く群像劇。様々な人生を辿って孤独と向き合うことに疲弊する人々が、動物病院「DOG DAYS」を舞台に出会いを重ねていく。愛犬と飼主の依存関係をオムニバス的な描写から始めて、やがてひとつに集約していく展開が楽しい。メインで登場するフレンチブルドッグ、チワワ、ゴールデンレトリバーそれぞれの名演に癒され、少しありえない偶然過ぎる展開もほっこり許せて温かい気持ちになれる作劇。
劇中で語られる飼い犬15,000頭時代(国民の25%)という韓国の数字は、少子化が進む日本に置き換えても当てはまるだろう。因みに韓国人が犬を食べるという説は時代錯誤も甚だしく、動物福祉に対する意識向上が社会的スキルアップとして捉えられるほどの国であり、2000年代に入った頃から「愛玩動物」=ペットという呼び方を「伴侶動物」=コンパニオンアニマルに変えて定着した歴史がある。人間が犬にできることを問いながら、実はその人間こそが幸せへの道程を犬に導かれているのだと訴えるいくつかのエピソードが家族の新しいカタチを指南する。
不動産会社でリゾート開発企画を担当するミンサン (ユ・ヘジン) は、自宅1階を動物病院 DOG DAYS に貸しているが犬嫌いな中年男。当然ながら病院長のジニョン(キム・ソヒョン)とは犬猿の仲。だがそこに訪れる患者の飼主が有名建築家のミンソ(ユン・ヨジョン)だと知ったミンサンは、行き詰っていたリゾート開発プランの打開策を狙って、ミンソとの親交を持とうとジニョンに近付いていく。その時の経緯で保護犬だったチワワの「車長」を預かることになったミンサン。実は彼は少年時代に犬を飼っていた訳ありの過去があった。
口が悪くて皮肉屋だが、建築家として世界的な名声と威厳を持っているミンソ。だが彼女の生活は孤独で、愛犬のフレンチブルドッグ「ワンダ」だけが心の支えになっていた。ミンソが病気で倒れて救急車で運ばれたことによりワンダは迷い犬となってしまう。それを助けたのは作曲家ソニョン(チョン・ソンファ)とジョンア(キム・ユンジン)夫婦に養子として引き取られたばかりの少女ジュ(ユン・チュナ)だった。不妊治療が叶わなかったジョンアにとって、ジュは掛け替えのない新しい娘なのだが、ジュはその里親夫婦と馴染めない関係が続いていた。そこに出会ったワンダの存在はジョンアとジュの絆を作る希望の光となる。
ゴールデンレトリバーの「スティング」が異物を呑み込んだためジニョンの病院に慌てて担ぎ込んできたヒョン(イ・ヒョヌ)。そこに現れた男ダニエル(ダニエル・ヘニー)はヒョンの恋人スジョン(キム・ゴウン)の元彼で、ヒョンはスティングがダニエルに懐いていることに嫉妬する。実はスティングは元々スジョンが飼犬で、 彼女が海外在住で不在の間だけヒョンが預かっていたのだが・・・
メイン主役はフレンチブルドックのワンダ。特別な演技は何もしないが、ちょっとブサかわいい顔と真丸の瞳でミンソやジュを見つめる様子が愛おしく、救急車で運ばれるミンソを走って追いかける場面だけでも涙腺崩。病院の駐車場に住み着きながら人間に恐怖心を抱くチワワは、ジニョンが名付けた車長(チャジャン)と呼ばれる。怪我対策でジニョンが付けたニット帽を被ってダンボール箱内にいる姿は反則的に可愛らしい。武骨なミンサンとの不釣り合いな対比もコミカルで、このツーショットだけでも笑えてしまう。
大型犬からはゴールデンレトリバーのスティングが一番の演技派。表情豊かで緩急つけた仕草や天然ボケの演技もする。ヒョンとスティングのやりとりが絶妙で、悲しい場面になると本当に悲しそうな顔をする。他に末期がんと診断されて苦しい余命を過ごす犬の話があり、ジニョンが安楽死を勧めても頑なに拒絶する飼主が、苦しむ姿に耐えきれなくなって決断をしていくシーケンスでは、劇場全体からすすり泣く声が漏れ聞こえた。
ミンソによって飼主の高齢化問題も取り上げられる。宅配便員として働く青年ジヌ(タン・ジュンサン)を絡ませて人間自身の老人孤独を言及。更には保健所での殺処分問題にも触れるが、ここはさすがに詰め込み過ぎで「犬は買わずに引き取ろう」へと繋げる展開は急ぎ足が過ぎていた。
本作の主要人物はソニョン夫婦以外はそれぞれの繋がりをまったく持たない他人同志から始まるが、ラストでは全員がその場所に揃うエンディングへと繋がる。群像劇にありがちなパターンと言ってしまえばその通りだが、ひとつひとつのエピソードを大切に繊細に描き、どの話が本筋とは言わせないバランスの良さで各人物の長所と短所を真摯に表現して感情移入しやすい物語を形成する。奇を衒わない作品作りが逆に新鮮で、笑って泣いてほっこりしながら、犬を抱きしめている側の人間が癒されるのは国が違っていても普遍だと感じる。
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