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2025年03月13日00:00

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映画『ロボット・ドリームズ』

『ロボット・ドリームズ』 (スペイン, フランス)
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台詞なしナレーションなし字幕なしのアニメーション。舞台設定が80年代ニューヨーク界隈とかなり明確で、あの9.11で姿を消したワールド・トレード・センターが背景に見えている。ところがそこに登場するのは擬人化された動物たちのみで、主人公は犬という世界感。動物を擬人化したアニメーションの近年最右翼『ズートピア』が、ちょうど続編の公開が発表されて狂喜していたところ。だが本作ではあの作品と違って、それぞれの動物習性が行動に反映されることもなく、絵柄的にデフォルメされた記号的なキャラ付けの印象が持たれる。ランダムに動物種を振り分けたような登場人物たちに序盤は戸惑うのだが、物語が進むにつれてその世界感に惹き込まれていく魅力があるから不思議。
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更にこの世界には80年代ニューヨークの常識とは違う部分がもうひとつ。それは知能を携えたロボットが愛玩商品として販売されているところ。独り暮らしで友達もいないドッグは、孤独から逃れるためテレビショッピングで見た市販の友達ロボットを購入。ロボットは学習能力によりドッグとの友情を深めるように進化し、まさに友達として唯一無二のパートナーになる。
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夏の終わりにロボットを連れて海水浴に出かけたドッグだが、塩水で錆びてしまったロボットは浜辺で動けなくなってしまう。修理も運ぶこともできないため、ドッグはロボットを修復する準備のため一旦帰宅する。だが道具を持って向かった翌日の海水浴場は、その日からオフシーズンで閉鎖され進入禁止になっていた。柵の向こうには横たわったまま動かないロボットが見える。柵を越えて浜辺に侵入し救い出そうとするドッグだが、不法侵入で警察に捕まってしまうため、仕方なく再び海開きとなる来年まで待つことを決意する。
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記号的デフォルメキャラによる棒線だけのロボットの表情が、途中からとても豊かな感情表現に見えてくる頃、この世界にどっぷりと浸かり始める。買った側と買われた側という主従関係にあるドッグとロボットに、真の友情など芽生えるものか・・・と斜めな目線で観ていたはずが、お互いの想いが我々の世界に例えるペット関係よりも人間味がある。会話を交わさない友情は、互いの気持ちの確証が持てない。その歯がゆさこそがこの作品の狙いで、ビーチで錆びて置き去りになったロボットが、作品タイトル通りに夢を見ていく展開が始まる。
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ドッグの元へ戻っての楽しい日々を何度も夢見るロボットだが、その結末はいつもアンハッピーで砂浜で動けない現実の我に返る。そもそも機械なのにドッグとお互いがどう想っているのか? 好きだとしてもどのくらい? 一方通行の感情ではないのか? どこかで裏切られないか? 揺さぶりによって感情移入がより深くなる後半につれ、ふたりが再会は叶わずにそれぞれの道を歩む切ない展開へ。
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言葉のない代わりに効果的な演出手段として使われる音楽は、アース・ウィンド・アンド・ファイアーによる1978年全米ヒット曲「September」で、流れる度に味わう高揚感は、ピアノ、スキャット、ロボットの口笛などにアレンジされ「Do you remember. The 21th night of September?」=「あの9月21日の夜を覚えているかい?」が物語にシンクロする。
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セントラルパークでのローラースケート場面から始まるドッグとロボットのダンスシーンでこの曲がかかるところは涙腺崩壊。ドッグとロボットが離ればなれの間、ドッグは新しい友達(恋人?)を見つけたりするのだが結局は孤独に戻ってしまう。ロボットは回収業者によって浜辺から運び出され、鉄屑工場に売られてバラバラにされてしまう。翌初夏6月になってようやく海開きとなりビーチに戻るドッグだが、そこにロボットの姿はない。孤独に耐えきれなくなったドッグは、街で安売りしていた別の友達ロボットを購入。新しいロボットと改めて最初から友情を作り上げようとする彼の行動は、素直に応援できない複雑な気持ちになる。
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その頃のロボットはアライグマに拾われて、バラバラの身体を修復してもらう。新しい身体はラジカセの改造で不格好なのだが、ロボットはアライグマとの新しい生活に順応していく。このラジカセの身体がラストの感動を招く仕掛けになっていて、街でロボットがドッグを見かけるところで彼の身体のカセットテープから「September」が流れ出す。
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ロボットはドッグに駆け寄り再会を果たし、曲に合わせて “あの時” のように手を繋いでダンスをする。。。のだが、それはまたしてもロボットの見ていた夢の出来事・・・・実際はロボットが見かけたドッグの横に別の友達ロボットがいる。そしてロボットの横にもアライグマがいる。ドッグがロボットの気配を一瞬感じて振り返った時、ロボットは身を隠してしまう。あれだけ何回も夢に見ていてた再会を、自ら拒むロボットの心境を思うと涙が止まらない。
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戻りたいあの頃よりも、今のパートナーとの幸せを崩すことはもうできない。大切にするべきものがある時、未来の選択に痛みが伴うことを台詞なしで訴える作品が過去にあっただろうか。体現したドッグとロボットのすれ違いの物語は、想い出の曲「September」をそれぞれ別の場所でダンスする分割画面でシンクロしながら完結する。記号的な印象だったキャラクター達がいつの間にか表情豊かに見えて愛おしくなる。

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