mixiユーザー(id:4380531)

2024年12月16日00:00

190 view

映画『化け猫あんずちゃん』

『化け猫あんずちゃん』(日本)
フォト
ロトスコープを使う目的が、活劇的な動きのリアルさではないというコンセプトは目から鱗。機微な表情にどこまで役者の演技がトレースされて組み込まれているのか興味深い。そのくらい各キャラが表情豊かで(あんずちゃん除く)陰影付けの巧さも加わり映像を観る楽しさが最後まで飽きない。
フォト
公開当初「主役の女の子の言葉遣いが悪くて子供には見せられない。」という投書を読んで観るのを躊躇していたのが、メルマガVol.250掲載の切通さんによるレビューを読んで急遽鑑賞。なるほど冒頭からいきなり舌打ちして登場するかりんちゃん(五藤希愛)の父親への態度と言葉使いは容赦ない。世の中を冷めた視線で刺し、少し捻くれた性格も含めて、将来ろくな大人になりそうもないかりんちゃんの第一印象。父親の哲也(青木崇高)に置いてきぼりを食っても、焦りや悲観は薄く切なさを感じる隙はない。だが別れ際の会話に込められた父娘会話の描写は絶品で、金を渡して罵声を浴びせるかりんちゃんは、何故にそんなに達観した子供でいられるのだろうと感心してしまう。
フォト
この話に出てくる大人たちは、ほぼほぼがダメ人間ばかりなので、奸智に長けているかりんちゃんには誰も敵わない。その中で唯一、彼女にニュートラルに接してくるのがあんずちゃん(森岡未来)というわけで、かりんちゃんの思惑通りにならない大人がそこにいる。「嘘つき」と言われて図星なのが悔しい彼女は、こともあろうに地元のやんちゃ小僧を家来のように使って仕返しをするという悪辣ぶりが凄い。なるほどこの子の素行を我が子に見せたくないと投書する親の気持ちも解らなくはない。だがあんずちゃんはそれに怒りを見せることは微塵もない大人のスタンスを自然体で維持する。
フォト
大人といってもあんずちゃんは化け猫なので人間ではない。無免許運転で取り締まられていたが、それなら試験に合格すれば免許証を発行してくれるのか・・・ていうかそこがツッコミどころなこの世界感が可笑し過ぎる。そんな長閑(?)な日常は、都会育ちのかりんちゃんには怠惰の極み。化け猫に続いて化け蛙やら何やらがうぞうぞと出てくる展開でも慌てふためくのは周囲ばかり。ついには貧乏神や地獄の番人までもが、かりんちゃんトリガでこの世まで這い出てくる羽目となりドタバタ劇が始まる。
フォト
ここからが活劇的な見せ場となるのだが、意外とありがちなエンタメ要素の範囲内だったというのが正直な感想。死後=地獄というのがこの作品世界には存在していて、ひょんなことからトイレを経由して地獄に入り込むかりんちゃんは、亡くなったお母さん(市川実和子)が普通に生きて働いている。
フォト
鑑賞側はこの時点で既に、かりんちゃんの捻くれ具合はお母さんを失ったことがきっかけ。その再会から別れまでを追体験することで、自分の弱さと淋しさを露呈し、解放されていくかりんちゃん。母の温もりと別れのケジメ、そして死を現実として受け入れ彼女の心のロジックは変化する。
フォト
ラスト再びの哲夫との別れの場面が、かりんちゃんの成長を表現していて不覚にも涙腺に刺激がきた。それまでとは違うかりんちゃん=都会より田舎を選び、あんずちゃんの存在を初めてポジティヴに捉える。最後までニュートラルなままだったあんずちゃんとの対比があってこそより一層に嬉しくなる構図。冒頭で思った将来ろくな大人になりそうもなかった少女が、奸智に長けたままでも優しい心が備わった姿でそこに居る。化け蛙の温泉は是非とも招待されてみたい。
フォト
<映画レビューを切通理作さんのメルマガ内にて連載しています>
月2回配信、購読開始から1ヶ月無料
http://yakan-hiko.com/risaku.html
切通理作編集メールマガジン『映画の友よ』
【 料金(税込) 】 660円 / 月
【 発行周期 】 月2回配信
【 最新発行日 】2024年11月30日
映画の友よ Vol.258, 259
<『痴人の愛』『ロボット・ドリームズ』>
<『DOG DAYS 君といつまでも』『美晴に傘を』>
13 4

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2024年12月>
日 月 火 水 木 金 土
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031    

最近の日記

もっと見る