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『キラー・ナマケモノ』(アメリカ)
問答無用のラジー賞候補まっしぐら展開なので、あれやこれやの矛盾と倫理観の逸脱を目くじら立てて指摘するのは野暮という作品。作り手側の開き直り精神による真剣なナンセンスワールドを許容して楽しめるかどうかの度量が試されるコメディホラー。主役にナマケモノをセレクトしている時点で、バカバカしさを真面目に見せる境界線を意識して、絶妙バランスのセンスオブワンダーを訴えようという難易度の高い志がコンセプトにあると邪知したくなる。『コカイン・ベア』もそれに近かったが、あそこまで映像クオリティは高くないので、益々もって妙な色気を持って挑んでいる印象。
終盤では何故か自然保護啓発メッセージをも折り込んで、教訓めいた落としどころを準備するのだが、狙いは完全にハズレていて脱力感だけが助長される。派閥争いが激しい女子寮で起きるソサエティ会長選挙戦では、人物紹介で必ずSNSフォロワー数を画面にデジタル表示する。フォロワー集めこそが選挙に勝つというロジックの女子寮生たちの争いの中に、マスコット的に迎え入れられたナマケモノ(アルファと命名される)が介入し理由なき殺人を繰り返す。行方不明者が出ようが生徒が殺されようがお構いなしに選挙戦とキャンパスライフは継続し、日本人感覚とは異なるSNSマウント合戦がヒートアップ。人が死んでも警察は介入せず、最後はナマケモノ=アルファと主人公エミリー(リサ・アンバラバナール)のタイマン対決。そこでようやくアルファの殺意の動機は明かされる。
CGではなくアニマトロニクス演出に拘っているのが特徴で、殺戮を繰り返してもナマケモノは愛おしい。スマホを使いこなし、自動車を運転するなど、何でもありなところは『ベニー・ラブズ・ユー』にも匹敵。ナマケモノが動きが鈍いなどというのは人間の勝手な思い込みで、パナマのジャングルで暮らしていた彼(彼女?)の姿を見た者など実際はいないのだ。ラストは事件から1年後、惨殺騒動後のキャンパスとは思えない長閑な風景に呆然となる。この感性に共鳴できる映画ファンこそが真のゼネラリストなのだろう。
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