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2024年10月09日00:00

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映画2024年9月/『対峙』『隣人X 疑惑の彼女』

9月に観た映画一覧と、掲載ができていなかった昨年鑑賞作品のレビューです。
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愛に乱暴
ラストマイル晴れ
エイリアン ロムルス晴れ
ナミビアの砂漠晴れ
ポライト・ソサエティ
ぼくの家族と祖国の戦争
ボストン1947
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サユリ
ぼくのお日さま
アビゲイル
スラムドッグス
ヒットマン
侍タイムスリッパー晴れ
Cloud クラウド
憐れみの3章
サウンド・オブ・フリーダム晴れ

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『対峙』(アメリカ)
ハイスクールで発生した少年による無差別銃乱射事件の被害者側夫婦と加害者側夫婦が対話をするワンシチュエーション作品。加害者側の少年も現場で自殺しているため、お互いに愛する子供を失っている2組の夫婦だが、その立場は対極にある。よそよそしい会話から始まり、しだいに核心を突いた問答に展開していく中、お互いの魂をぶつけ合うような会話劇に極限的緊迫感が持続する。
音楽や回想シーンを一切まったく入れていない演出効果が、さながらドキュメンタリーの様相で生々しく描ききられる110分間(本作は完全フィクション)。加害者側の気持ちを少しでも理解しようなどと云う方が酷であろう被害者側夫婦が、ふとそこに気持ちを傾ける瞬間がどこかで見えてくる。赦すとか赦さないとかを超越したところに辿り着くのか、そんな甘い物語ではないのか。ラストの加害者側婦人の告白がどれほど切ないことか、自分を赦せない人にどう接すれば気持ちが通うのかを思い知らされる。出演はリード・バーニー、アン・ダウド、ジェイソン・アイザックス、マーサ・プリンプトン。
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『隣人X 疑惑の彼女』(日本)
宇宙紛争によって惑星難民となった異星人「X」が地球に移住している世界が舞台という寓話だが、宇宙人という設定はそのまま現実の外国人差別や難民問題を比喩しており、国際化が著しい近年の都内在住者には思いが直結してくる。Xは人間そっくりに擬態して社会に紛れ込んでいるが人類に危害を加えることはないため、アメリカ政府は惑星難民としてXの移住を受け入れた。これに追従して日本もXの国内移住を認める法改正を行う。人々はX=正体不明の宇宙人という図式で存在を恐れ、何処の誰がXなのかを常に気にしながら生活するという不安を抱えた。
Xの存在を明るみにする記事で売上げを伸ばそうと躍起になるゴシップ週刊誌「週刊東都」の記者として雇われている笹(林遣都)は、Xの可能性が高いらしい良子(上野樹里)に接近する。親しくなろうとしたことでふたりは恋仲になっていくが、良子の父親(酒向芳)がXだと確信を持った笹は、証拠のDNA採取のため彼女の実家に出向いて父親の頭髪を手に入れるという荒業を実行する。特ダネ記事は笹のネーム入りで週刊東都に掲載され完売。良子の実家にはマスコミが押しかけて大騒ぎとなり、更には良子までもがメディアの前に晒される。後悔の念に駆られる笹は週刊東都と共に世間からのバッシングを浴び、笹は自らこそがXであるという告白記事を執筆して辞表を編集長(嶋田久作)に突き付け良子の元へと向かう。
同名のコミックもあるが原作はオリジナルの小説版。3人いた女性主人公を2人に絞り、男性側視点として笹をメインに展開する仕掛けになっている。宇宙から来た惑星難民を日本政府が受け入れるという空想劇に、現実の難民問題をオーバーラップさせて唾を飛ばして論じるのもどうかと思うが、クルド人家族をモデルに日本の難民受入れ問題の実態を描いた『マイスモールランド』(2022年)や、同じテーマが悲劇の結末となる『福田村事件』(2023年)と比べると、この空想設定劇の人物たちの方が寛大なことに気付く。
そこが寧ろ現代社会の騒動としてリアルなのだ。日本人は国籍や宗教感の違いを気にしないと言えば嘘になるのが現実。人種や生い立ちによって価値観や感性は異なり、相手を受け入れる範囲は個々の度量によるが、群衆心理は時にその個人の意志を覆す現象を起こす。本作は宇宙人だという理由で相手を敵視しかねない民衆心理をかなり大袈裟に見せているが、実際その場に置かれた時(宇宙人が日常周囲に紛れている)そうならないと言いきれる自信はないだろう。
『ウルトラセブン』でアンヌはダンが宇宙人であってもダンに変わりはないと答える。長い時間を経て関係を構築してきた礎がそう言わせるのであり、それは夫が例えXだとしても何も変わらないと断言する良子の母親(原日出子)もしかりだ。対して見知らぬ他人が“宇宙人”だと云われれば、疑心暗鬼な先入観が頭を過ぎるのが自然。渋谷に溢れる外国人観光客には路上にゴミを捨て大声で騒ぐマナーを無視した連中も多くいるので、それを理由に国籍とその人種全体を否定しがちな感性があるのも事実。
異なる場所で異なる価値観を持っている者を敵視するのは、見た目で区別ができないからこそ異物と見做す思考が歴史でも普遍にある。ホロコースト、カースト、魔女狩り、日本の歴史で最も身近なのは在日朝鮮人差別だろう。とかく何らかの格差を作らなければ気が済まない人類の闇、無意識に宇宙人を炙り出したがる民衆心理は背筋が凍る。宇宙人だと疑われて、地球人である証拠を見せて疑いを晴らす手段を持つ者など誰もいないのだ。
良子の働くコンビニの同僚で台湾留学生のリン(ファン・ペイチャ)は、生活費と学費のため掛け持ちで居酒屋でバイトをする。そこでの同僚拓真(野村周平)との関係を中心に、こちらは宇宙人抜きのリアルな無意識差別問題を取り上げている(一応リンもXの可能性がある人物として週刊誌にピックアップされるが物語には関係ない)。日本語が上手く喋れないリンは、居酒屋客や拓真の友人に「なにを言ってるのか分からない」と言われて深く傷つく。言っている側に悪意はない無意識の差別が、どれだけ人の心を傷付けるのかが示される一幕は、救ってくれた国なのにそこでの生活が辛いという部分で、惑星難民と立場が繋がるサイドストーリーとしてスパイスを効かせている。
笹と良子、良子とのその父親の関係修復がクライマックスとなるが「どの人物がXでありXでない」という答えは、最終的にビジュアルで明確に示される。意外な真実を見せるところがどんでん返しなのだろうが、ここは原作にもないところで蛇足に感じた。物語中盤の笹との会話で良子が、その人がXかどうかじゃなくその人の心で見て欲しいと話し、笹はそこでは消化できずに意見が食い違っていた。ラストに向けて思いが通う方向になるのだから誰がXかはもはや有耶無耶のままでよかったのではないか。
キャッチコピーの「愛した人のほんとうの姿を、あなたは知っていますか?」を逆手に取ることこそがサプライズであり、差別と偏見を比喩した物語をバッドエンドにせずに、救われたラストに誘導する巧さが(『星の王子さま』を朗読するのは上手い)あるのだから、Xなんて実は存在しなかったのでは?という問いを残した幕引きでもよいと思った。

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