『DIVE ダイブ 海底28メートルの絶望』(ドイツ)
海底に取り残されるワンシチュエーションサバイバルは“海で身動きが取れなくなる”というジャンルパニックとしてはもう出尽くした感もあるが、本作が他作品と差別化できている点は間違いなく“サメが登場しない”こと。『ロスト・バケーション』(2016年)『海底47m』(2016年)『海底47m 古代マヤの死の迷宮』(2019年)等と比べてリアリティ重視になっているのが特徴。
スキューバダイビング中に起きた落石で、姉のメイ(ルイーザ・クラウス)が海底の岩場にスタックして動けなくなり、妹ドリュー(ソフィー・ロウ)は何回も陸と海底を行き来しながら姉を救う方法にチャレンジする。水深28mという割と浅めな場所なのがポイントで、呼吸法や潜水病対策などの要素を取り込みつつ、追加の酸素ボンベや岩を動かすためのジャッキアップを確保しようとドリューが孤軍奮闘する前半。落ち着きがなく行動が裏目となりがちなためパニック状態に陥るドリューに比較して、姉のメイは海底で身動きが取れないながらも、冷静に救出の可能性に思考を巡らせてドリューに指示を出す。
2020年製作『サイレント・ウォーター』(スウェーデン・ノルウェー・ベルギー合作)のリメイク作品なので、鑑賞後にこちらもU-NEXT配信にて比較した。オリジナルをほぼ忠実に踏襲している(姉妹の立場が逆だが)ので、どちらがオリジナルか判らないほどに出来栄えは甲乙を付け難い。強いて言えばオリジナル版が82分、リメイク版が91分と9分の差があるのに、不思議とリメイク版の方がテンポよくまとまっている。オリジナル版はダイビングに潜るまでに主人公姉妹の確執や人間関係などの描写が丁寧なのだが退屈感がある。リメイク版ではなんとなく訳ありで、単純仲良し姉妹ではなさそうという空気を匂わせる程度まで省略し、時折り過去の回想シーンを挟み意味深な味付けをすることで伏線の深読みをさせる仕掛け。時間配分をほぼ海底脱出劇描写に注力している割り切りがプラスに作用している。エンタメ的にも自動車のトランクをぶち壊す方法などは圧倒的にリメイク版が迫力勝ちしている。
酸素残量と低気温による体力消耗で残された時間が示されるタイムサスペンス要素や、終盤でなんとドリューとメイの立場が入れ替わるなどワンシチュエーションの限りを尽くして緊張感が途切れない91分を堪能できる。
『ホビッツベイ』(ニュージーランド)
ペットショップを営む普通の夫婦に突然、見知らぬ土地と家の権利書が弁護士から届けられる。それは夫のベン(マット・ウィーラン)の母親が生前に持っていた土地で、場所はオレゴン州の海辺に位置するホビッツベイという地域。妻のジュールズ(ルシアン・ブキャナン)も合意して相続のために7歳の娘レイア(ザラ・ナウスバウム)と犬のアーチーを連れたベン一家は一路ホビッツベイに向かう。人里離れた場所にある少し不気味なその家は、32年間も人が住んでいない廃墟だったが、ベンは飲料水を供給するため地下に埋まっていた貯水タンクの栓を開けた。だがそれは長年封じ込められていた“ある生物”を解き放つことになる。それはかつてベンの家系を恐怖に陥れたクリーチャーだった。
『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズを手がけたVFXスタジオWETA制作という売り文句から、邦題も『ホビッツベイ』にしたであろうことは想定内。原題は『THE TANK』。今どき珍しいCGほぼなしのマペットと着ぐるみでクリーチャーを登場させているので、これでVFXスタジオを売りにするというのもお門違いというか内容を観ていないというか。アナログ特撮がダメというつもりはなく、かつての『エイリアン』を彷彿するシチュエーションもあって面白いのだが、ストーリーはやや単調で退屈。せっかくの訳あり臭漂うベンの家系設定を特に生かすでもなく、何かがいる→人が襲われる→また何かがいる→別の人が襲われるの繰り返し。ジュールズが希少生物の専門家という設定なので、前半でこの生物が両生類だという説明がある。だが実際に対峙するクリーチャーは両生類的な生態を特徴にするでもなく肩透かし感あり。
家族に危機が迫るクライマックスでは、閉鎖空間を生かした演出や自動車の内外を巡る展開などの工夫は諸々感じられ、役者陣は水中に潜ってのアクションなど頑張っている。ただ残念ながらホラー的緊張感は皆無という感想が正直なところ。
ラストの決め台詞「Get out! My car!」も間がイマイチでケレン味には遠く及ばない。これは作品の問題というより、鑑賞側がCG映像に慣れきっている昨今、動きが追えるマペット特撮ではもう限界であるということを今更ながらに痛感。かつて『エイリアン』を初めて観た時のスリルと緊張感にはどれだけ手に汗を握ったか。あの興奮はもう2度とないのだろうなと寂しくなることしきり。エンドロール途中で数年後に再開発でタンクを開ける映像があり続編の可能性を匂わせているが。これはおそらく無いだろう。
『犬人間』(ノルウェー)
これぞ「未体験ゾーンの映画たち」セレクションに相応しい、ノルウェー発のシュールで奇妙なホラー短編。クリスチャンは富豪の息子だが両親は他界して大豪邸に独り暮らし。朝、自分と飼い犬のために丁寧な手料理を作る。だがそこに現れた犬は明らかに人間。チープな犬の着ぐるみを被って、仕草も犬のように振る舞い、手を使わずに食事=エサを犬食いする。『哀れなるものたち』の鑑賞直後だったので、犬の脳を移植された人間なのかと思ったが、どうやらそうではないらしい。
マッチングアプリで知り合った女子大生シグリッドとクリスチャンはお互いすぐに惹かれ合い、招かれた豪邸で一夜を明かす。翌朝、姿を見せた飼い犬のフランクの尋常ではない事態に驚きを隠せないシグリッド。忠実な飼い犬として接して欲しいと説明を受けるシグリッドは動転して逃げるように帰宅するが、大金持ちの好青年との関係を諦められず、再びクリスチャンに会いに行く。
79分という短い作品だが、中間の20分くらいを更に飛ばして観ても理解できる。そのくらい中だるみがあって、終盤ようやく緊迫感が出てクリスチャンとシグリッドとフランクの三つ巴の関係が激しく交錯。
ホラー仕立てではあるが、クリスチャンの狂気の背景が今ひとつ不透明で、犬人間のフランクもどうして犬を長年続けてきたのか説得力がなく疑問は解消されるない。展開が強引だが演出的には大真面目なだけに、ふと怖さよりも滑稽さを感じてしまう。ラストカットも極端過ぎる進展で苦笑いすることになる。北欧のホラーは本気度の高い恐怖映画があるので見逃せないのだが、この作品はずっこける側の意味で面白い。
『エレベータ・ゲーム』(アメリカ)
あるビルのエレベータで階数ボタンを決められた順番に押していくと異世界にトリップできるという都市伝説。ライアンはそのエレベータで数ヶ月前に行方不明になった妹を救い出そうと、インフルエンサーグループに身分を隠して加入するが、実はそのグループにいる妹を弄んで捨てた男への復讐も企んでいた。
ついに現場のエレベータに乗り込み順番通りにボタンを押していくとアクシデントが次々と起こり、ライアンとその仲間達は呪われた世界に轢き引きずり込まれていく。次の犠牲者は誰か?呪いのエレベータは容赦なく人間狩りを実行する。
ジャパニーズホラーのオマージュと言ってしまえば聞こえがよいが、どうしてもパクリと言いたくなるストーリー、キーワード、シチュエーションのオンパレード。突っ込み所が満載なのも承知のうえで作られているのもよく判るので、あとはビジュアルを楽しむだけ。貞子の親戚にはかなり苦笑する。
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