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2023年12月17日19:00

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映画『あの娘は知らない』

『あの娘は知らない』(日本)
フォト
見逃していた井樫彩監督&脚本による昨年9月公開の作品。今回、墨田区菊川にあるカフェ併設型映画館Stranger(ストレンジャー)で舞台挨拶付き再上映があるということで足を運んだ。昨年9月に開業した同館は、2018年に閉館した新潟県の十日町シネマパラダイスで使われていた座席が引き継がれると話題になっていた49席のミニシアター。入館するとまず明るい雰囲気のカフェが展開しており、一見どこに劇場口があるのか判らない。ポークサンドとカフェラテを注文して入場時間を待っていると、その前の上映作品も舞台挨拶があったようで、終了後のカフェは交流の場となり大賑わいだった。コンセプト的には一昨年閉館したアップリンク渋谷を洗練したイメージ。モダンな雰囲気のカフェも居心地が良く、近所にあったら入り浸ってしまいそうな親しみ感のある空間だった。

この日は井樫監督と主演の福地桃子が上映後に登壇してトークショーを開催。ふたり揃って朴訥としたタイプながら、一所懸命に撮影の思い出話や苦労話を披露されているところが好印象だった。作品鑑賞の感想は、とにかくワンカットワンカットの全てが写真集にできるような映像美あふれる映画という印象。冒頭の自転車シーンから始まり、室内のサンダーソニア(風鈴形の生花)俯瞰シーン、ごみ置き場で倒れこむ天側映像、雨、海、島、空、煙草などが色彩鮮やかにフレームインされている。

芸能事務所レプロエンタテイメント主催による先にキャスティングありきの作品とのことだが、海辺の街に溶け込むように馴染んでいく福地桃子と岡山天音の一挙手一投足が心地よい。喪失感を背負うことで生きる時間が止まっている者同志の出会いから始まる物語は、映像美の巧みさによる効果がじわじわと脳内に染み込んでくる。

ストーリー自体は特筆なく淡々と進行するのだが、主役ふたりの心の紐帯が描かれた先に、やがて未来への希望と現実の隙間に葛藤する姿として帰結するところが肝と感じた。孤独と向き合う経験は誰にでもあるが、本作ではそこから始まり変化していく情感の揺れのような感覚を、鑑賞後になんとも言い難い不思議な余韻として残す。

『牙狼〈GARO〉』シリーズ等のアクション系作品の撮影技師として活躍された富田伸二が、映画作品37年目にして初めて挑んだ合成無しのキャメラマン作品が本作になる。富田氏とは石井てるよし監督,岡秀樹監督と共にインドネシア初の特撮ヒーロー『Satria Garuda BIMA』2ndシーズン製作のため、ジャカルタに長期滞在していた時に現地で会っている。静岡県伊東市の海沿いの街を舞台に、光と影のコントラストとアングルへの拘り、色彩豊かな映像への拘りが全編で感じられる完成作を観て、新境地開拓となった同氏の今後の活躍を更に期待したくなる。

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