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2023年10月20日20:00

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映画『ザ・フラッシュ』『奈落のマイホーム』

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『ザ・フラッシュ』(アメリカ)
マイケル・キートンのバットマンが超絶かっこよい。撮影順が判らないので迂闊なことは言えないが、近作の『ワース 命の値段』『シカゴ7裁判』出演時よりも絞ったスタイルで登場し、70歳とは思えない躍動感とニヒルぶりを両立させる立ち振る舞い。往年の『バットマン』(1989年)『バットマン リターンズ』(1992年)をリスペクトした演出の数々にも興奮冷めやらず、特に各種ガジェットの扱いと手捌きぶりは鳥肌モノ。カメオ的な出演程度と思っていたのが、まさかここまでフルに活躍するとは思ってもいなかった。本作はこれだけでも観賞価値ありなのだが、もちろんそれだけに留まらない。

地上最速の男フラッシュ=バリー・アレン(エズラ・ミラー)の能力特性を活かした過去へのタイムシフトは、DCEUもついにマルチバース世界を始めたかと苦笑していた事前情報に説得力を持たせる。現役バットマン(ベン・アフレック)とワンダーウーマン(ガル・ガドット)を冒頭で見せてから次元展開に入るのもリップサービスでお祭り気分を盛り上げる。崩れるビルから落下する何人もの赤ん坊をフラッシュならではの能力で救出し、大ピンチのサポート犬(エンドロールで再登場)までをも見捨てない活躍。コミカルに落としドラマ部分へ繋げていくところも上手く『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を肴にしながら歴史の歪曲を説明するくだりは、とかくつまらなくなりがちな状況説明台詞を気の利いた会話に仕立てる。

『マン・オブ・スティール』(2013年)から始まったDCEU初期作品は、この陽性的センスが不足していて娯楽大作を観ているのに肩の力が抜けないのが、同時期のMCU作品との決定的な違いだった。やや皮肉とも言えるのがMCU『アベンジャーズ』(2012年)のジョス・ウェドンが、ザック・スナイダーの代行で急遽監督を務めた『ジャスティス・リーグ』(2017年)から演出的な洗練さが感じられるようになり、DCEUはしだいに外部からの大胆な監督起用をすることで作品世界に広がりを得た。その極めつけがジェームズ・ガンの起用であることは言わずもがなで、彼が共同会長に就任した今後のDCには楽しみしかない。

アンディ・ムスキエティ監督の作品を観るのは今回が初めて。元々から評判のよかった同監督の『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』に俄然鑑賞意欲が沸くほど映像感性が新鮮。ゾッド将軍(マイケル・シャノン)の復活に対抗するためスーパーマンの救出に向かう一連のシーケンスから、スーパーガール(サッシャ・カジェ)登場以降は怒涛の展開でクライマックスまでノンストップとなる。メタバースによってダブルフラッシュとなるまでのアレン同志の関係が、出会った時の先輩面vs無気力青年から、能力の移管を経てバディ関係へと進展、最終的には母親を想う気持ちで完全一体化する成長ストーリーとして作品の軸足を確立する。

ところが、それらを崩壊させてしまうラストは想定外で衝撃的。母親の悲劇を史実として受け入れること、僅かな軌道修正によって父親の無実の罪を晴らす結末。ある意味本作によって、DCEUはマルチバースを否定したとも解釈できる。最後のどさくさで登場するニコラス・ケイジのスーパーマンは、1990年代に企画されてお蔵入りしたティム・バートン版『スーパーマン・ライヴズ』へのオマージュなのだが、ニコラス・ケイジがほぼ本人役を演じる『マッシブ・タレント』(2023年)を観たばかりだったので、かつての栄光から一転して売れないどん底の役者人生に陥っている主人公が、スペインの大富豪(ペドロ・パスカル)に取り入られ国際的犯罪組織に巻き込まれていくドタバタ劇と、今回のスーパーマンコスチューム姿の彼がリンクしてしまう可笑しさあり。

最後はジョージ・クルーニーまで登場する本作、ある意味でこれまでのDC作品への訣別の意志が込められていると思うのは考え過ぎだろうか。今後の作品は完全リブートと噂されているので引き続き注目したい。

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『奈落のマイホーム』(韓国)
原題『Sinkhole』= 陥没穴。地道に働き続けた節約生活11年でようやく購入した待望のマイホーム(分譲マンション)が欠陥住宅で、入居2週間後に地下500mのシンクホールに陥没してしまうというパニックムービー。これを終始コメディチックに描ききろうという志に本作の大義はある。破壊力満点のVFX映像と生死を懸けたサバイバル脱出劇を、ポップコーン片手に笑いながらハラハラ観るのが似合うエンタメ性が売り。ディザスター映像のクオリティがかなり高いのだが、そこに反して展開される緊張感のない人間描写に拍子抜けさせられる前半。シリアスな災害モノを期待したらがっかりするが、あの予告編を観ればそういう期待を抱くこともないか。

登場人物はドンウォン(キム・ソンギュン)一家と会社の部下たち&マンションの住人。どの人物も自分本位の小市民キャラで、好感度が低く感情移入し難いポジショニングを印象付ける。それがやがて生死の分かれ目となる窮地に追い込まれ、いがみ合っていた住人、同僚たちとの結束力&連帯感の結実がカタルシスとなる共闘劇。チャ・スンウォンが演じる鬱陶しくて癖のある隣人マンスの緩急付けのあるキャラが絶妙で、ストーリーのキーパーソンとなる。終盤の泣かせどころを盛り込む唐突感が全体のテンポを崩しているのが惜しい。程々にして笑いと涙のバランスを保って欲しかった。

結末への展開は物理的理屈として相当に無理があるのだが、その違和感を帳消しにするくらいの力技にはなっている。キャラクター好感度が終盤に上昇するのも許せる範囲。欠陥マンションを販売した企業側や、行政を追求するような描写は最後まで一切なく、事故1年後を描くエンディングも潔過ぎて笑ってしまった。

本作は2021年韓国映画興行収入第2位。第1位『モガディシュ 脱出までの14日間』は実話に基いたソマリア内戦下で起きる北朝鮮側との共闘脱出劇でスリル満点。こちらも素晴らしい作品で韓国映画は秀作揃い時代がまだまだ継続中。『ひかり探して』『優しき罪人』『手紙と線路と小さな奇跡』『三姉妹』『死を告げる女』そして是枝監督『ベイビー・ブローカー』。韓国映画のクオリティの高さには感服するばかり。

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